依存
智代理たちが連れて来られていたのは、龍戦士族の街レーガルフにあるクリャウと呼ばれる城だった。
内部の造りはガリデル城によく似ていて、三階建てに地下が一つある。マリオルに集まるよう指示された大部屋は一階にあり、銀でできたその扉の取っ手を智代理はひねった。
「来たか」
重い扉を開けると、中にはマリオルと"数人のプレイヤーたち"がいた。
「みんな……」
数人のプレイヤーたち――カエデ、シュン、ユカリ、セーヴは、どこか浮かない顔をしていた。用意された椅子に座って、用意された机に向かっている。
その中にいるマリオルが、酷く異質なものに感じた。
「座りましょう、智代理」
横のアスカに促されて、智代理は席に着いた。それを合図に、マリオルが立ち上がる。
「――まずは、改めてようこそ、私たち龍戦士族の街へ」
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マリオルに指示されたレンバレス森林を探索中、エスオは戦いに身が入らなかった。
今のマリオルは、以前の彼女と明らかに何かが違う。
それは見た目がどうこうというものではなく、内面的に。
人格が変わってしまったのか、それとも考え方が変わってしまったのか。それは、エスオにも分からなかった。
それでも、彼女の"カリスマ性"は、変わっていなかった。
声を掛けた者すべてに影響を及ぼし、自らの知恵とし、力とし、そして一部とする。
それが彼女のカリスマ性。数々のMMORPGで"人に従うのが気に食わない"という理由でギルドマスターとしてやってきたエスオですら、唯一従おうと決意できた人間。
特別な、人間なのである。
「エスオさん」
「おう、どうした?」
ふいにエスオの背に声をかけたのは、同じくマリオルに言われてこの森にやってきた今は彼の部下にあたる一人のプレイヤーだった。
「例の"跡"、見つけました」
「そうか、ご苦労」
エスオたちがこの森へとやってきた理由、それは、ある"痕跡"を回収するためだった。
その"痕跡"が何のために必要なのか、同用途で使われるのかエスオは聞かされていない。仮にマリオルがエスオ以外の人間にそれを言っていたとしても、それはエスオには関係ないと言い切れるだろう。
そんなものがなくても、エスオはマリオルに付いて行く。それほど彼は、彼女に依存していた。




