迫りつつある確信
「はぁっ……はぁっ……」
智代理たちがこの部屋から消え、アモンの拘束から解放された龍太郎はその場に膝をついた。
「少々手荒い真似をしてしまったことは謝罪しよう」
「全くだ……もう少しやり方ってものがあっただろ……」
龍太郎はアモンを睨みながら言った。
「まぁ、そう怖い顔をしないでくれ。我ら悪魔族は君を歓迎しているのだ」
「……俺が、悪魔族を救う"救世主"だからか?」
龍太郎が立ち上がってそう問うと、
「やはり君は気付いているようだな?」
「……まだ確信があるわけじゃない」
龍太郎の頭には、一つの仮説が浮かび上がっていた。
それはこの世界の正体……というには少々おこがましいかもしれないが、恐らくそう言う他ないのだろう。
ただ、それはまだ憶測の域を過ぎない。
もっと、核心に近づく何かがあれば……
「確信があるわけじゃない、か。……ならば、私がそれを確信させてみせよう」
「なに?」
アモンは虚空に右手を差し出し、握るような動作をした。
すると握った手に黒く渦を巻いた空間が発生し、そこから手を引くと、アモンの手には一冊の本が掴まれていた。
「この本は、古くからガリデルに貯蔵されていたものだ。過去のことが記されてある」
「過去の……こと……?」
龍太郎はアモンの言葉に息を呑んだ。
「そしてこの本には――――釘丘龍太郎、君のことが記されている」
「……!」
ガリデルに古くから存在していた本。
それにはこの世界の過去のことが記されており、そして何故か、龍太郎のことも記されている。
――龍太郎の中で、仮説がだんだんと確信になっていく。
「――来たか」
不意に、アモンがそんなことをつぶやいた。
その瞬間、入口の扉が開く音が聞こえる。
「遅れてしまい申し訳ありません、アモン様」
「も~、ハルちゃんがもたもたしてるからー……ほら、早く入って!」
「ご、ごめん……」
「フラウ、ハル、アモン様の前だ。あまりはしゃぐなよ」
入口からぞろぞろと入ってきたのは、四人の悪魔族だった。
男女二人ずつで、それぞれが剣や杖を持っていたり、ローブや鎧を纏っていたりしている。
それにどこか、この悪魔族たちから懐かしいような雰囲気が――
するとアモンが、今しがた入ってきた悪魔族たちに目を奪われている龍太郎に向かってこう言うのだった。
「――紹介しよう。我ら悪魔族が誇る悪魔族軍の隊長たちだ」




