洞窟の中で 2
「セーヴさん! 青目の怒値が少し下がってきてるからタゲ取りお願いします! シュンと智代理さんは継続して緑目のタゲ取り! それから……」
ガーディアンとの戦闘が始まって十分ほどが経過した。
台座から出現したガーディアンたちは、その瞳の色でそれぞれ行動パターンが違う。
セーヴが相手をする二匹の青目ガーディアンは一撃が重たい大剣を持ち、それを力に任せて振るう。
対し、シュンと智代理が戦っている二匹の緑目ガーディアンは両手に一本ずつ曲刀を持ち、それらを素早い動きで自在に操る。
「神森! そろそろ赤目の攻撃パターンが変わる! 一旦退け!」
龍太郎は奥で赤目ガーディアンと戦うアスカに向かって叫んだ。
「上等よ……、何パターンでも相手してあげるわ!」
アスカが今対峙している赤目ガーディアンは、他のガーディアンのように無骨な鎧など着ておらず、黒いコートを羽織った装いをしている。
右手には身の丈ほどもあるような大きな刀を持ち、非常に隙のない身のこなしで戦う。
それに、動き自体も速い。
一撃一撃も重く、アスカの刀とかち合う度に、重い金属音が響き渡る。
「神森、あまり無理はするなよ? 相手は本来NPCだ、間違っても勝てると思うんじゃない」
「分かってるわよ……そんなこと!」
赤目が振るった空を斬り裂く一太刀を躱すアスカ。
しかしその避けた先に再び刀が振り下ろされる。
「しつこい……!」
アスカはその振り下ろされた一太刀を、刀で何とか弾き返す。
「ククク……そうだ、もっと踊れ! そして苦しめ! 誰も俺の前には逆らえない……!」
台座の中央で獰猛な笑みを浮かべるガラミアの手に握られているのは、怪しく光る赤紫の玉。
龍太郎はそれを凝視する。
(あれを何とか壊せれば……)
このガーディアンたちが出現したのは、あの謎の球体のせいだ。
あれを壊せば、恐らくガーディアンたちは大人しくなる。
なるのだが……
「くそ、こいつら火力がおかしすぎる!」
シュンが、悪態を吐きながら一旦飛び退く。
「回復するよ、シュン君!」
その姿を見たカエデがスキルの詠唱を始めた。
シュンの身体を淡く青い光が包み込む。
《ブルーヒール》。初期に覚える回復スキル《グリーンヒール》の派生スキルだ。
【セーバー】というクラスはその特徴として、スキルの各派生が多彩であることが挙げられる。
「サンキュー、カエデ!」
HPを回復したシュンは、再びガーディアンへと特攻していく。
すると、
「ぐっ……!」
「セ、セーヴさん!」
青目ガーディアン二体と対峙していたセーヴが苦しそうな声を上げた。
「今、助けに行きます――《レオ:コマンドアタック》!」
【サモナー】のクラスであるユカリが、召喚獣を呼び出して青目ガーディアンのうち一体に向かって向かわせた。
呼び出された獅子のような姿の召喚獣レオは、その体をいかんなく使い青目ガーディアンに体当たりを仕掛けた。
「ありがとう、ユカリ君!」
そして、たちまち減ってしまったセーヴのHPも、カエデの手によって元通りになる。
――一見すると若干龍太郎たちが押されているようにも思えるこの状況。
しかし、事は着々と前へと進んでいるのだった。
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それから時はそう経たず、戦況は一変することとなった。
「クク……そろそろか」
ガラミアは不敵な笑みを浮かべると、ガーディアンたちを召喚した時と同じように、右手を高らかに掲げた。
それは、再びあの球体を使って何かをしようとすることの合図で……同時に、龍太郎たちが狙っていたタイミングでもあった。
「――《ヘルローズ》!」
俺は、素早くスキルの詠唱を終え、発動する。
対象は……ガラミアの掲げた右腕だ。
「ぐっ……!?」
スキルによって出現した黒い茨によって、ガラミアの右腕のみが拘束される。
「貴様……、だがな、この程度で!」
ガラミアの手中にある球体は、強く光りだした。
このままでは、ガラミアにさらなるちからを与えてしまいかねない。
――だが、
「そんな固定された腕で持ったものを、無事でいられると思っているのかしら?」
「何……っ?」
瞬間、ガラミアのその右腕に、紅い剣閃が走った。
そして――
パリンッ!
「なぁっ……!?」
ガラミアが持っていた赤紫の球体だけを……アスカが真っ二つに斬ったのだった。
「ガラミア、お前はガーディアンのちからを信じすぎたんだ」
俺は、驚愕に目を見開くガラミアに向かって言う。
アスカはいままで赤目ガーディアンと戦っていた。
だがそれは、アスカがガラミアに近づくためであり、気づかれないように、戦いながら場所を細かく近づけていっていたのだ。
ガーディアンという、システム的にも無敵なNPCを相手にしてこんな動きができるのは、アスカしかいない。
「くそっ……貴様らぁっ!」
ガラミアは激昂し、目を見開き、そして……
「ククククク……」
突如、押し殺すように笑い始めたのだった。
「な、何がおかしい……?」
こんな状況で笑えるとしたら、本当に頭がおかしくなったとしか思えない。
もしくは……
「ククク……俺がもし、ガーディアンのちからを信じすぎたのなら、お前らは……」
龍太郎の後ろにそびえ立つ、金色の扉が、重い音を立てて開かれる。
「――貴様らは、全てを信じすぎだ……!」
その言葉とほぼ同時に扉の奥から現れたのは――――
「ふふ、予定通り、といったところですね」
一人の女性だった。
……いや、ただの女性じゃない。
人間族じゃない。
――龍の皮膚を持つ、龍戦士族だった。




