洞窟の中で
エクライネス周辺に広がる山岳地帯。
ここには、ガラミアが不可解な力で生成した鉱山が存在する。
山をくり抜くように開けられた入口の奥に広がるのは、まるで巨大な生き物の口の中のような暗闇だ。
「……しかし、こんな場所がこの山岳地帯にあるなんてね」
龍太郎の横を歩いていたアスカが岩壁に手を伝わせながら言った。
「入口だけ見てれば暗い洞窟だったけど、中は以外と明るいんだな」
「この明かりも、あの秘書の言っていたガラミアの力というものなのかしら……?」
鉱山内部は入口から少し先に進んだ辺りから、周囲の壁が青白く発光し始めていた。
「まあ、そうだろうな。……さて」
龍太郎は動かしていた足を止める。
「これが……」
アスカを含めた百鬼旋風のメンバーも足を止めた。
そして目の前には……
「金色の、扉……」
眩いばかりの黄金色に輝く、とてつもなく巨大な扉が立ち塞がっていた。
「これがガラミアが秘密裏に造り上げていたという部屋の扉か」
龍太郎は扉に近づき、その様子を確かめる。
「……特にトラップの類いは無し。みんな、準備はいいか」
振り返り、メンバーの反応を確かめる。
今更ここに来てまで、準備が出来ていない者などいるはずもなかった。
龍太郎はその大きな扉を、押し開いた。
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「ククク…………やはり来たか」
部屋の中央。
蒼銀の台座に立つのは一人の男性。
こちらに背を向けている。
「……ガラミア、お前の悪事を止めに来た」
龍太郎は台座に向かって一歩踏み出し言う。
すると、背を向けていた男性――ガラミアが振り向いた。
「止める……? この俺を?」
ガラミアはこちらに向かってニヤリと嗤った。
「当たり前だ。それじゃあ早速……」
龍太郎の横を、何かが横切った。
その何かは一直線にガラミアへと向かう。
「フン」
「……ふうん、中々面倒くさそうなものを使うわね」
龍太郎を横切った何か――アスカが繰り出した刺突は、ガラミアにヒットするその寸前で受け止められた。
「やつからもらったこの障壁……少しは役に立つようだな」
アスカの一撃を受け止めたその紅い障壁は、ガラミアの目の前に展開されていた。
刀の先をピンポイントで受け止めている。
「アスカの一撃を難なく受け止める謎の障壁……セーヴさん、シュン!」
龍太郎の言葉と同時に、セーヴとシュンは駆け出した。
「二人で挟み撃ちか……甘いな」
セーヴとシュンが放った一撃は、再びガラミアの障壁によって阻まれた。
「ふむ、なるほどな……」
龍太郎は思考を巡らせる。
ガラミアの展開する障壁が何を媒体にして生成されているか分からないが、おそらくこの部屋のどこかにあるのは間違いない。
この部屋はたいして大きくないため、調査自体は直ぐに終わるだろうが……。
「どうした? もう終わりか? ……ならば、次はこちらからだ!」
ガラミアは右腕を掲げる。
その手には、赤紫に輝く宝玉……ミルドレイから聞いたアイテムが握られていた。
「こい! 守護傀儡ども!」
その叫びに答えるように、部屋中を地響きが襲った。
それと同時に、ガラミアの立つ蒼銀の台座が淡く光を放つ。
「こいつは……」
「フン、お前らが古代竜を討伐しようとした時、ガーディアンに登録していたのは既に調査済みだ……。ありがたく使わせてもらうぜ……!」
そして台座に召喚されたのは、五体の巨大なガーディアンたちだった。
そのどれもが、以前龍太郎たちが登録したガーディアンである。
「登録を上書きする能力か……!」
「クク、その通りだ。だが、それが分かったところで何ができるって?」
ガーディアンの強さは、本来倒せるようなレベルのものじゃない。
もしこれがMMORPGだとしたなら、危険プレイヤーを投獄する役割を担うNPCのような存在に当たる。
だが……、こちらにだって考えはある。