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閑話1

「ふぅ、やっと一息つけるか……」

 ドームのような形状をした大広間の最奥(さいおう)、ギルドマスターだけが座ることの許された大仰な椅子に座る女性がひとりいた。

 彼女の名はマリオル。この施設、ギルドホールを統括する一大ギルド銀の氷槍(ブリューナク)のギルドマスターだ。そして、冨影の子のひとり。

 マリオルはメニューパネルを呼び出すと、下部にあるボタンを押してオプション画面を開く。

「本当に、できないとはな」

 マリオルの見ている画面には、本来あるべきコマンドが存在していない。

 ログアウト機能の廃止(はいし)

 これが意味するところは、オンラインゲームを少しでもプレイしたことがある者ならば誰もがわかるだろう。

 マリオルは、トントンと本来ログアウトボタンがある場所を指で叩く。

 もちろんログアウトが実行されるわけでもなければ他に何か異変が起こるわけでもない。

 ただ無いのだ。他の者たちと比べて、確実にひとつだけ。

 このことは、ギルドで一番信頼が置けるサブリーダーのエスオ以外には話していない。

 ただエスオに話したとは言ってもかなり(にご)した話し方だった。大学をしばらく休学するとか、そういう感じの。

 だから、なぜこのゲームを出来るのかとか、なぜ常にログインしているのかなど疑問質問は溢れるほど出てくるはずだが、エスオは黙って了解してくれた。

 彼の中でどういったふうに解釈(かいしゃく)されたのかはわからないが、頷いてくれた以上こちらから要求するものは何も無い。彼ならば、マリオルが大学を休学している理由を他の友人に問いただされてもうまくやってくれるだろう。

 エスオはいい友人だ。マリオルは心の底から自分がとてもいい友人と巡り合うことができた運のいい人間だと思った。彼の力量は目を見張るものがあるし、リーダー気質もある。本当ならマリオルよりはるかにギルドマスターに向いている人物だ。

「私は、つくづく運がないな」

 それでもマリオルは大きな部屋でひとり、まるで自分を嘲笑(ちょうしょう)するかのように小さく笑った。

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