一章 九条遼太は間違えた 3
登場人物が増えてきましたので登場人物紹介をする予定です。
翌日の昼休み。
普段、九条たちは廊下でだべっている。場所が廊下なのはほかの組みの教室には入れないから。
そんなわけで、今日もまたそのメンバーが集まりはじめる。
ふと、教室から坂井が出てきた。
「おい、わかってるよな。」
狐塚の一言で、一斉に彼とは逆の方向へと駆け出すバスケ部のメンバー。
振り返ることもなくそのまま西階段を駆け下りる。下の階を駆け抜け東階段へ。メンバーは爽快感でいっぱいだった。もといた廊下に戻ると坂井の姿はなかった。
「おいどうしたんだよ、みんなして急に駆け出して。」
後ろから声がする。振り向くと坂井が、いた。笑っていた。
狐塚、九条をはじめとするバスケ部は踵を返すと、一斉に走り出した。
振り返れば、坂井が困惑した面持ちで、追いかけてきた。
階段で上と下に別れ、坂井を振り切ろうとする。
しばらくしてチャイムが鳴り、昼休みのそれは終わった。
狐塚からバスケ部に伝言があった。
練習中、ヤツと組むなパスを回すな。
いつもは仲良くしている坂井の友達も今日ばかりは組むわけには行かなかった。
彼はますます困った顔付きになり、周りを気にしていた。
3対3で仕方なく組むことになった者はパスを回さないどころか、彼のパスを受け取らないという方針で行くようだ。
初めは、ヘイ!とか言って元気が良かったた坂井も、もうこの流れを察したのだろう、しょぼくれていた。
帰り道は無視を決め込む。もっとも、彼から話しかけてくることはなかったが。
そんな坂井をみてざまあ、と彼らは思っていた。
数日の間それが続いたあと、新しいニュースを坂井と同じ塾の大田原というサッカー部が教えてきた。
それを受けたコーちゃんはまだ懲りていないのかと激怒した。
九条も、何なんだよあいつと愚痴をこぼす。
そして狐塚の案で無視だけでなく、直接攻撃に出るようになる。これで、坂井も反省するかな。そう思ったと言ったら嘘になるだろう。彼らは正義の名のもとにそれを執行した。
一つ目。ハゲ!と罵る。彼はおでこが広く、それを気にしているようで、それを指摘されるとすごい怒った。
それをわざわざやるのは気持ちが良かった。
髪の毛関連でもう一つ。育毛スプレーを使っているジェスチャーを彼の前でする。最初は頭上に?マークが浮かんでいた坂井も髪をいじる動作が追加されたことから気づき、激怒していた。
そんな攻撃も始まり一週間。
それの始まりはとある昼休みの青田の一言。
「あ、コイツ『ゆってぃ』に似てね?!」
ゆってぃ。ご存知だろうか。ずいぶん前に流行った芸人である。
「ちっちゃいことは気にするな♪それワカチコワカチコ〜♪」
その場にいた殆どの人の腹筋が崩壊した。
もちろんそうはならず、怒りでこめかみをピクピクさせている坂井。
「おい!ふざけんなよ青田ぁ!」
青田家は厳しくて、彼は坊主頭である。いわゆるハゲキャラとしていじられる立場の人間。
そんな彼に言われたのが悔しかったのだろう。坂井は青田に殴りかかっていった。
青田。彼はバスケ部でありながら陸上で行くとこまで行った運動神経抜群の男子である。もちろん、ムキムキだ。ヒョロヒョロの坂井が勝てるわけがない。
青田はそれを躱すと彼と組み合い、膝を坂井の腹に一発、二発と打ち込んでいく。
青田は頃合を見計らって相手を突き飛ばす。すると坂井は尻を付いた。
本来なら笑えるこのシーンが笑えなかったのは坂井が涙目だったからである。
青田がかける言葉を探しているその最中に、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り坂井はそそくさと立ち上がり自分のクラスへと駆け込んだ。
今思い返せばひどい話だと九条遼太は思う。だが、その頃の彼は人を正義という大義名分を得ていじめるのが楽しく、止まれなかった。
書いていて、これはR15なのだろうかと疑問に思いました。
このまま全年齢対象でも大丈夫でしょうか。