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「歩ちゃん──?」
葬儀を追え、親族に頭を下げながらさっさと建物から出てしまおうと思ったとき。鼻声が歩をとめた。
今度は誰だとイラついたように振り返った歩は、できるだけ不機嫌さを抑えつつ、わざとらしいくらににっこりする。一瞬雪子かと思うくらい、その人は写真で遠めに眺めた雪子に酷似していた。
「どちら様ですか」
「あの、私雪子の母親なんだけどねっ」
歩の威圧にも負けず、雪子の母親と名乗る老婆は飛びつかんばかりに歩に近寄り、手を握った。若干歩のほうが気圧されながら、一歩、足を引く。
「歩ちゃん、あんたに話があるんだ。少し時間をくれないかい?」
断るのを許さない勢いに負けて、歩は思わず頷いてしまった。気分の悪さますます大きくなり、歩の顔も暗くなっていく。けれど老婆は気づかないのか、手を引っ張り近親者のいる部屋へと連れて行った。
そうして差し出したのは、元は白かったのだろうけれど、今は茶けてしまった封筒。受け取ろうか迷う歩の手に、老婆は封筒を押し付けてきた。その目は、涙で潤んでいるようにも見える。
「お願い、受け取って」
仕方なく受け取り、封を切る。
見慣れない大人っぽい字を目で追いながら、歩はそれを嫌々読んだ。
──私には、関係ない……。
思わず手紙を持った指先に力が入る。白い紙に皺が寄った。
紙を折り畳んで、目の前の老婆をしっかりと見つめる。
「これは本当ですか?」
「……私は中身を見ていないけれど、大体想像できるよ。中に書いたあったのは、あれだろう? 雪子が病気になってっていう……本当だよ」
先ほどまで気おされるほどの雰囲気だった老婆は、打って変わって目を伏せ、そう呟いた。老婆の言ったことも手紙の内容には含まれていた。




