悪魔の優しさ
*愛実SIDE*
あたしは、混乱していて何もできなかった。
そんなあたしを、あいつが助けてくれた。
あいつが言ってくれたおかげで、落書きは消された。
あいつは、いつも通りの王子様スマイルをしていたけど、目の奥が笑ってはいなかった。
一応、みんなは信じてくれたけど、正直あたしは居心地が悪かった。
「空川さん、大丈夫ですか?」
「・・・うん。」
はっきり言って、そのあとの授業は頭に入らなかった。
そして、時間は過ぎ昼休み。
あたしは、正直迷っていた。
でも、あいつが目で訴えてきたから、行くことにした。
「愛、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。心配しないで。」
「わかった。」
あたしは、複雑な気持ちを抱えたまま、屋上に行った。
ガチャッ
「おい!おせーぞ!」
「愛ちゃん、やっと来たー!遅いよー!」
「あっ、ごめん。」
あたしは反射的に謝っていた。
「あのさ、朝はごめんね。みんなにまで、迷惑かけちゃって。」
「あれは、愛実ちゃんのせいじゃないよ。」
「そうだよ!愛ちゃんが謝る必要ないよ!」
「谷口、このまま終わらねぇだろうな。」
「そうだな。あの谷口がそう簡単に引き下がるわけないよな。」
「あたしは、大丈夫だから。」
「ごめんな、俺のせいで。」
「別に、気にしてないよ。」
「安心しろ。これからは俺が守るから。」
「えっ。」
あたしは、正直驚いた。あの悪魔がこんな優しい言葉をかけるなんて。
少しだけ、あいつのことを、見直した。