王子様の素顔
休み時間、あたしは逃げるように琉穂のところに行った。
「琉穂ーもうマジ最悪。」
「よりにもよって全員集合だもんね。」
「うん。もうありえないよー。」
「まぁ、しょーがないよ。それに、狙ってた人のが多いんだから、
そんなこと言ったら、起こられるよ。」
「喜んで変わってあげるっつーの。」
「まぁ、にしもっちゃんに言いな。」
「早く席替えしてほしいよー。」
「ドンマイ。次移動教室だから行こ。」
「うん。」
ありえなさ過ぎるよ・・・。
角だから、3☆s以外に人はいない。
つまり、嫌でも関わらなくちゃいけないってわけ。
マジで最悪・・・。早く抜け出したいよー。
なんて思いが通じるわけもなく、あたしは3☆sと関わることに・・・
そして、1週間がたった頃、あたしはある秘密を握ることになる。
それはある日の放課後、あたしは1人教室に残っていた。
日直の仕事を終え、帰ろうとしたとき、空き教室から、誰かの声が聞こえた。
「海都君のこと好きなんだけどさぁ。あたしと付き合わない?」
それは、同じクラスの谷口さんが水山海都に告白しているところだった。
あたしは、ドアの影に隠れて、その現場を見ていた。
ガタッ
だが、その拍子にドアにぶつかってしまい、見つかってしまった。
「あんた何?」
「あっえっとー。」
言い訳を考えていると、水山海都が近づいてきた。
「谷口さん。すみませんが、僕はこの子と付き合っているので。
あなたとは、付き合えません。」
「えっ?!」
あたしは、突然の出来事に頭がついていかなかった。
「ちょっと何言って・・・!!」
反論しようとしたが、水山海都に手で口をふさがれてしまい、何もいえなかった。
「えっあっ・・・。」
谷口さんは、そのまま走って帰っていった。
「ちょっとあんた何言ってんのよ!なんであんなこと言うわけ!?
信じらんない!!!」
水山海都は何も言わなかった。
「ちょっと聞いてんの?!」
「・・・うっせーな。」
「はっ?!」
それは、とても低い声で、さっきまでの王子様キャラとはまるで別人だった。
「いちいちうるせーな。安心しろ。お前には興味ねぇから。」
「はぁ?!こっちだってあんたに興味なんかないわよ!」
「お前さ、俺のこと、嫌いだろ。」
「ええ。嫌いよ!みんなに騒がれて、いい気になって。自分をカッコイイとか思ってるあんたが大嫌いよ!
それに、こんなに俺様のくせに、あんな王子様キャラなんか演じちゃって。マジありえない。」
「フッ。お前気に入った。おい、明日から昼休み屋上来い!」
「はぁ?!行くわけないでしょ。」
すると、水山海都は近づいてきて、あたしは壁とあいつに挟まれてしまった。
「な、何よ!」
水山海都は壁に手をついて、あたしを見下ろしてきた。
長身のせいで、すごく見下ろされてしまう。
「ぜってー来いよ。愛実。」
あいつはあたしの耳元でそうささやくと、帰っていった。
「何で、あたしが・・・。」