第16話~第20話
第16話
触れてはいけない場所
礼拝堂の壁画が気になって、私はその後も何度か北棟の古い記録室へ通うようになった。
もちろん一人では行かせてもらえない。
だいたいはガイルさん、時々アレクシスがついてくる。
記録室には、読めなくなった古い本や、崩れた羊皮紙、王都の古地図が山ほど残されていた。
その大半は私には読めない。
けれど、ごくたまに、触れた瞬間に分かるものがある。
言葉そのものではなく、その奥にある“つながり”だけが伝わってくるのだ。
「また止まってる感じがする……」
私は一冊の分厚い記録書に指を触れた。
紙は乾いて硬く、端が脆くなっている。
それなのに、奥にまだ何かが残っていた。
隣で本を整理していたガイルさんが顔を上げる。
「何か分かるのか」
「はっきりじゃないですけど」
「それでもいい。言ってくれ」
最初に比べると、ガイルさんの口調はずいぶん柔らかくなった。
もちろん警戒が消えたわけではない。
でも少なくとも、最初のような露骨な拒絶は感じない。
「この本、たぶん“管理”について書かれてます」
「管理?」
「はい。流れを止めないための、何か」
自分でも曖昧だ。
けれど、本に触れた瞬間、礼拝堂の壁画と同じ感覚が走った。
根。枝。層。流れ。記録。
まるでこの世界そのものが、何か大きな構造物みたいに思える。
「アレクシスにも見せた方がいいかもしれません」
そう言った時だった。
急に、指先が熱くなった。
「……っ」
「ナカジマ?」
本の表紙に走っていた細いひびが、ぱきりと音を立てる。
まずい、と思った瞬間には遅かった。
本棚の奥にあった別の本が一冊、床に落ちた。
続いて、もう一冊。さらにその隣も。
「離れろ!」
ガイルさんの声が飛ぶ。
私は反射的に本から手を離した。
けれど床に散った本の間から、淡い光が立ち上る。
細い糸みたいな光だ。
それが記録室の奥、普段は壁にしか見えなかった場所へと伸びていく。
「これ……」
壁が、揺れた。
石のはずの表面が、水面みたいに歪む。
「下がれ!」
ガイルさんに腕を引かれ、私は数歩後ろへよろめく。
次の瞬間、壁の一部が音もなく“開いた”。
そこには、階段があった。
地下へ続く、暗い石階段。
「こんな場所、城の図面には……」
ガイルさんが低く呟く。
私はその入口を見つめた。
暗い。
けれど同時に、妙に惹かれる。
あの下に、何かある。
たぶん、今まで見てきた“止まったもの”の根に近い何かが。
「行きたいのか」
いつの間にか、背後から声がした。
振り返ると、アレクシスがいた。
たぶん報告を受けて急いで来たのだろう。
いつもより呼吸がわずかに早い。
「アレクシス……」
彼は開いた壁を一瞥し、それから私を見る。
「何をした」
「ちょっと本に触れただけで」
「ちょっと、で済んでいない」
「それは、そうですけど……」
けれど、アレクシスの怒りはそこまで強くなかった。
むしろ警戒の方が強い。
彼は入口の前に立ち、暗い階段を見下ろす。
「封じられていた場所か」
「殿下、どうします」
ガイルさんが問う。
アレクシスは即答しない。
その代わり、私へ向き直った。
「お前はどう思う」
「……行くべきだと思います」
「理由は」
「ここが、たぶん“奥”だからです」
自分でも抽象的だと思う。
でも、そうとしか言えない。
「今まで私が直してきたものは、木とか水とか、表に見えるものばかりでした。でも、礼拝堂も、壁画も、この本も、もっと深いところで繋がってる」
私は暗い入口を見る。
「ここには、その根に近いものがある気がします」
沈黙が落ちた。
アレクシスはしばらく考え、それから低く言った。
「今日は入らない」
「え」
「準備が足りない」
私は一瞬、反論しかける。
でも、アレクシスの表情を見て飲み込んだ。
その目はいつも以上に冷静で、そして強かった。
「焦るな」
彼は私の前まで歩いてきて、言う。
「この先に何があるにせよ、お前を無防備なまま入れる気はない」
「……でも」
「行く」
はっきりと断言された。
「ただし、俺も一緒だ」
胸の奥が、少しだけ熱くなる。
この人はいつもそうだ。
止める時は止める。
でも、見捨てる形では決して止めない。
私は小さく頷いた。
「分かりました」
その時、アレクシスの手がそっと私の手首に触れた。
確かめるような、守るような触れ方。
「今日はもう記録室に入るな」
「……はい」
「触れてはいけない場所がある」
その言葉が、妙に胸に残った。
それはたぶん、記録室の奥だけの話ではないのだろうと思った。
第17話
あなたを預ける気はない
地下の封印された通路が見つかってから、城の空気はまた少し変わった。
表向きには大きな騒ぎになっていない。
でも、城の深部で何かが見つかったことは、察しのいい人間ならすぐに気づく。
その日の夕方、私はアレクシスに呼ばれて執務室へ向かった。
部屋の中には、彼だけではなくガイルさんと、もう一人年配の文官がいた。
「失礼します」
私が入ると、文官の人が一歩前へ出て丁寧に頭を下げる。
「北記録院のクラウスと申します」
「え、あ、はい」
「殿下より、地下区画の記録解読について協力せよとの命を受けました」
穏やかな人に見える。
眼鏡の奥の目は知的で、物腰も柔らかい。
でも私は、なぜか少しだけ落ち着かなかった。
「クラウスは古記録に詳しい」
アレクシスが言う。
「地下へ入る前に、既存の資料を洗い直す」
「なるほど……」
私は頷く。
たしかに必要なことだ。
何も知らないまま入るよりずっといい。
けれどその後、クラウスが続けた言葉に、私は思わず瞬きをした。
「ナカジマ様には、しばらく記録院にて調査補助をお願いできればと」
「……記録院?」
「ええ。城の北別棟です」
私は反射的にアレクシスを見る。
彼の表情は変わらない。
「そちらの方が資料が揃っている」
理屈としては分かる。
でも。
「それって、城の本館から離れるってことですか」
「数日だ」
アレクシスは簡潔に答える。
その瞬間、胸のどこかがきゅっと縮んだ。
たった数日。
それだけなのに、嫌だと思ってしまった自分に驚く。
クラウスは穏やかに言葉を続けた。
「もちろん護衛はつけます。殿下のご負担を減らすためにも――」
「預ける気はない」
アレクシスが遮った。
部屋が静まる。
クラウスが口を閉じ、ガイルさんがほんの少しだけ眉を動かした。
私は息を止める。
アレクシスは机の上に指を置いたまま、冷静な声で言う。
「記録院で調査をすること自体には反対しない。だが、ナカジマを別棟に移す気はない」
「殿下。しかし、効率を考えれば」
「効率の問題ではない」
クラウスの言葉を断ち切るように、アレクシスは続ける。
「記録が動くならこちらへ持って来い。持ち出せないものがあるなら、俺が同行する」
その場の誰も、すぐには口を開かなかった。
私はアレクシスを見つめる。
預ける気はない。
その言葉の強さに、胸が熱くなるのと同時に少しだけ息苦しくなった。
嬉しい。
でも、それだけじゃない。
この人は今、明らかに“監視”や“必要”の言い訳を超えたところで動いている。
クラウスは最終的に静かに頭を下げた。
「承知しました。手配いたします」
文官たちが退室したあと、部屋には私とアレクシス、それにガイルさんだけが残った。
「殿下、あまり露骨すぎると余計に反発を招きます」
ガイルさんが苦い顔で言う。
「分かっている」
「本当に分かってますか」
「分かっている」
アレクシスはそう言うが、説得力は微妙だった。
ガイルさんはため息をつく。
「……私は護衛配置を見直します」
そう言って部屋を出て行った。
二人きりになる。
沈黙。
私はしばらく迷ってから、口を開いた。
「……あの」
「何だ」
「今の、さすがに強すぎませんでしたか」
アレクシスは私を見る。
「何がだ」
「“預ける気はない”のところです」
「事実だ」
「またそれ」
「事実は事実だ」
私は思わず額を押さえたくなる。
「殿下」
「アレクシスだ」
「……アレクシス」
言い直すと、彼は少しだけ目を細めた。
それから、私の方へ一歩近づく。
「お前は、別棟へ移されることをどう思った」
「え」
「嫌だったか」
私は答えに詰まる。
嫌だった。
その通りだ。
でも、それをどう言葉にすればいいのか分からない。
「……少しだけ」
「少しか」
「だいぶ、かもしれません」
小さく認めると、アレクシスの表情がほんの少しだけやわらいだ。
「なら問題ない」
「問題ありますよ」
「何がだ」
「私がだいぶ嫌だと思ってることも、アレクシスが平然とそういうことを言うこともです」
「前者はお前の本音だ。後者は俺の本音だ」
強い。
本当に強い。
私は何も返せなくなって、視線を逸らした。
アレクシスの手が、そっと私の髪に触れる。
「離す気はない」
低い声。
「……はい」
その返事は、自分でも驚くくらい素直に出た。
第18話
地下へ続く前夜
地下区画へ入る日が決まった。
明日の朝。
同行するのは、アレクシス、ガイルさん、私、それから選ばれた騎士数名と記録官が一人だけ。
大人数では動かない。
何があるか分からない場所だからだ。
その前夜、私はまた眠れずにいた。
怖くないわけじゃない。
むしろ、怖い。
あの暗い階段の先に、何があるのか分からない。
それなのに、近づけば近づくほど、自分がそこへ引かれている気もする。
窓辺に立って夜風に当たっていると、背後で扉が軽く叩かれた。
「起きているな」
アレクシスの声だ。
「どうぞ」
入ってきた彼は、いつもの黒い上着ではなく、軽装だった。
明日に備えてすでに動きやすい服装なのだろう。
「眠れないのか」
「少し」
「明日のことか」
「たぶん」
私は窓の外へ視線を向けたまま頷く。
しばらくして、隣に人の気配が立つ。
アレクシスだ。
「怖いなら、行かなくてもいい」
その言葉に、私は反射的に首を横に振る。
「行きます」
「即答だな」
「……怖いのと、行かないのは別です」
アレクシスが少しだけ黙る。
「そうか」
「アレクシスは、怖くないんですか」
尋ねると、彼はしばらく窓の外を見ていた。
「怖い」
意外すぎて、私は思わず振り返った。
「え」
「お前がいる場所では、いつも少し怖い」
「それ、どういう意味ですか」
「お前が無茶をするからだ」
「またそれですか」
「事実だ」
私は小さく息を吐いた。
でも、その答えに少しだけ肩の力が抜ける。
怖いのは私だけじゃない。
この人も、自分なりに怖がっている。
「明日、私が何か変なことを言ったら止めてください」
「変なこととは」
「もっと奥に行ける、とか。まだ大丈夫、とか」
「止める」
「強めに」
「最初からそのつもりだ」
私は思わず笑ってしまう。
アレクシスがこちらを見る。
「何だ」
「やっぱり、心配性です」
「お前がそうさせる」
そのやり取りが不思議と心地いい。
沈黙が落ちる。
夜は静かで、城の外から遠い風の音だけが聞こえる。
「……アレクシス」
「何だ」
「明日、もし」
言いかけて、私は止まる。
“もし何かあったら”なんて言葉は、口にしたくない。
でも、アレクシスは察したらしい。
「何もない」
「言い切るんですね」
「ああ」
「どうして」
彼は私の方へ向き直る。
「俺がそうするからだ」
あまりにも真っ直ぐで、私はまた言葉を失う。
この人は本当に、迷いなくそう言う。
「……そんなの、反則です」
「またそれか」
「だって」
私は言い切れず、目を伏せた。
すると、アレクシスの指先がそっと私の顎に触れ、軽く上を向かせる。
「見るな」
「え?」
「一人で、最悪の方ばかり」
その声は低く、静かだった。
「明日は俺が一緒にいる」
その距離の近さに、息が詰まる。
「だから、今夜は眠れ」
私は小さく頷いた。
頷くことしかできなかった。
アレクシスが部屋を出て行ったあとも、しばらく胸の鼓動が落ち着かなかった。
でも、不思議ともう怖さだけではなかった。
第19話
地下の記録層
翌朝、地下区画への探索が始まった。
開いた壁の奥の石階段は、昼でも薄暗かった。
灯りを持っていても、光が奥へ吸われていくように感じる。
先頭はガイルさん。
その後ろにアレクシスと私。
さらに騎士たちと記録官が続く。
「寒い……」
思わず呟くと、アレクシスがすぐに自分の外套を肩へ掛けてきた。
「言う前から動かないでください」
「お前は言うのが遅い」
「そういう問題じゃ」
「静かに」
前方からガイルさんの低い声が飛ぶ。
私たちは足を止める。
階段を下りきった先に、広い空間があった。
石の床。
円形の壁。
そして中央に、巨大な柱のようなものが立っている。
「……何、これ」
私は息を呑んだ。
柱ではない。
無数の光の筋が絡み合って、樹の幹みたいな形を作っている。
でも、生きた木とも違う。
もっと人工的で、もっと冷たい。
「記録層……」
言葉が自然に口から零れた。
誰にも教わっていないのに、そうとしか呼べない気がした。
アレクシスが私を見る。
「分かるのか」
「少しだけ」
私は光の柱に近づく。
騎士たちが緊張する気配がある。
でも止められる前に、柱の周囲に浮かぶ模様が目に入った。
礼拝堂の壁画と同じだ。
根。枝。層。流れ。
「この世界、やっぱり……」
私は柱の前で立ち止まる。
触れたい。
でも、触れてはいけない気もする。
その時、柱の表面にひびのような暗い筋が走っているのが見えた。
「壊れてる」
「どこが」
アレクシスが問う。
「ここ」
私は暗い筋を指す。
「流れの一部が、切れてる。だから上の木も、水も、石も、全部途中で止まる」
記録官が息を呑むのが聞こえた。
「そんな……まさか王都全体が、この柱ひとつと繋がっているとでも」
「ひとつじゃないかもしれません」
私は答える。
「でも、ここは中心に近い」
気づけば、私は柱に一歩近づいていた。
すると、柱の内部に淡い像が揺らいだ。
人影だ。
幼い誰かが、樹の根元に手を伸ばしている。
「……誰」
次の瞬間、強い眩暈が走った。
視界が白くなる。
倒れかけた身体を、アレクシスの腕が支えた。
「ナカジマ!」
「だ、大丈夫……」
「大丈夫ではない」
彼の声が鋭い。
でも、私は柱から目を離せなかった。
「今、見えました」
「何をだ」
「子どもが……たぶん、誰かがここにいた」
アレクシスの表情が変わる。
記録官も顔色を失っている。
「幻視か、残像か……」
記録官が震える声で呟く。
「王都形成期の記録が残留しているのかもしれません」
ガイルさんが周囲を警戒しながら言う。
「殿下、長居は危険です」
その時だった。
光の柱の一部が、急に暗く脈打った。
ひびのような筋が広がる。
「下がれ!」
アレクシスが叫ぶ。
全員が一斉に退く。
次の瞬間、柱の周囲に黒い亀裂のようなものが走り、空間がびり、と震えた。
床の模様が一瞬だけ歪み、遠くで誰かの声みたいな音が響く。
「……っ!」
私は耳を押さえる。
痛い。
悲鳴にも祈りにも聞こえる、ひどく不快な音だった。
「撤退する!」
アレクシスの命令が飛ぶ。
誰も逆らわない。
私たちは一気に階段へ向かった。
その途中、私は振り返る。
光の柱の奥で、暗い筋がなおも脈打っていた。
まるで、傷口が生きているみたいに。
第20話
それでも、あなたのそばに行く
地上へ戻ったあと、私はしばらく言葉が出なかった。
身体は無事だ。
でも心が、ざわついたままだ。
あれはただの地下施設ではない。
王都そのものの“奥”だ。
そして、あの暗い傷は今も広がっている。
午後、私は一人で中庭の再生した木を見に行った。
最初に触れたあの木。
もう枝葉はだいぶ増えていて、風が吹くたびやわらかな音を立てる。
「ここだけ見ると、普通なのに……」
私は幹にそっと手を置く。
今は穏やかだ。
でも、その穏やかさの下に、地下の柱と同じ流れが確かにある。
少しだけ震えたその時、背後から足音がした。
「こんなところにいたのか」
アレクシスだ。
振り向いた瞬間、胸の奥の緊張が少しほどけるのを感じた。
「……来ると思ってました」
「分かりやすすぎる」
前にも聞いた言葉。
でも今日は少しだけ、それが嬉しかった。
アレクシスは私の隣に立ち、同じように木を見る。
「体調は」
「大丈夫です」
「信用ならん」
「今日は本当に」
「そう言って無茶をする」
そのやり取りすら、今は少し安心する。
私は木から手を離し、息を吐いた。
「アレクシス」
「何だ」
「地下、また行きますよね」
「ああ」
「止めても行きますよね」
「当然だ」
即答だった。
私は小さく笑う。
「私も、行きます」
アレクシスがこちらを見る。
「駄目だと言ったら」
「それでも行きます」
「なぜだ」
私は少しだけ考える。
答えは、ひとつではない。
「私にしか分からないことがあるから」
「それだけか」
私は首を横に振った。
「……アレクシスが行くからです」
沈黙。
風が吹く。
木の葉が揺れる音だけが、やけに大きく聞こえた。
言ってしまった。
でも、もう引っ込められない。
「危険だ」
アレクシスが低く言う。
「分かってます」
「俺のそばにいる方が、余計に危険な時もある」
「それでも」
私は彼を見上げる。
「離れて待ってる方が、たぶんもっと怖い」
その瞬間、アレクシスの表情がほんのわずかに揺れた。
驚いたのかもしれない。
あるいは、私が思っていた以上に本気だと分かったのかもしれない。
「……そうか」
短い声。
でもその中に、いくつもの感情が重なっているのが分かる。
彼はゆっくり手を伸ばし、私の頬に触れた。
もう前みたいに息を止めるだけではいられない。
私はその手の温度を、ちゃんと受け止めた。
「なら、次は絶対に離れるな」
低く、静かな声。
「俺の見える場所にいろ」
「はい」
「勝手に前へ出るな」
「……努力します」
「努力では困る」
思わず、少しだけ笑ってしまう。
アレクシスの指先が、そっと頬をなでた。
「お前が俺のそばに来ると言ったことを、後悔はさせない」
胸が痛いほど鳴る。
この人は、こういう言葉をあまりにも真っ直ぐに言う。
「……もう十分、反則です」
「またそれか」
「だって、本当にそうなんです」
私が小さく言うと、アレクシスはほんの少しだけ笑った。
その笑みはすぐに消えたけれど、確かに見えた。
私は思う。
地下の暗い傷も、止まった世界も、まだ何も解決していない。
むしろ、これからもっと大きなものが見えてくるのだろう。
それでも。
怖いだけではない。
この人のそばに行くと、自分で決めたから。
その決意だけは、もう揺らがなかった。




