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第1話

崩壊した森で、私は呼ばれた


 その森は、死んでいた。


 風は吹いている。

 なのに、葉は揺れない。


 鳥の声もない。

 虫の気配もない。


 ただ、静かすぎる。


「……ここ、どこ?」


 足元の土は、ひび割れていた。

 指で触れると、粉のように崩れる。


 こんな森、見たことがない。


 いや。


 これはもう、森じゃない。


 ――壊れている。


 なぜか、そう思った。


 そのとき。


 微かに、呼ばれた気がした。


 しゃがみ込む。


 ひび割れた地面の隙間。

 そこに、小さな芽がひとつだけ残っていた。


 あり得ない。


 この場所で、生きているなんて。


「……大丈夫」


 気づけば、そう呟いていた。


 触れていいかも分からない。

 でも、触れなきゃいけない気がした。


 指先で、そっと触れる。


 ――瞬間。


 空気が、変わった。


 ぱき、と音がした。


 何かがほどける。


 土が、色を取り戻していく。


 ひび割れが消える。


 芽が、伸びる。


「……え?」


 葉が開く。


 緑が広がる。


 その一点から、波のように。


 森が、呼吸を始めた。


 風が通る。

 葉が揺れる。

 音が戻る。


「なに、これ……」


 分からない。


 でも。


 確信だけはあった。


 ――今、私は。


 何かを、元に戻した。


「……やはりな」


 背後から、声がした。

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