第6話 昔から、こうだった
昼前、ガルドはいつもの席に座った。
今日は少しだけ機嫌が悪そうだった。
理由は特にないらしい。
「最近さ」
スープを飲みながら、ぽつりと言う。
「この宿、変だって言われるだろ」
「言われるね」
ミリアは皿を拭きながら答えた。
「時計ないとか、静かすぎるとか」
「ああ」
ガルドはうなずく。
「でもな」
一拍おいて、続けた。
「昔からだぞ」
言い切りだった。
「俺がガキの頃から、ここはこうだ」
ミリアは少し驚いた。
「ユウトが来る前から?」
「来る前も、来た後もだ」
ガルドは当然のように言う。
「急ぐやつは合わなくて出てく。
残るやつは、残る。それだけだ」
ちょうどそのとき、ユウトが薪を運んで通り過ぎた。
「……本人の前で言う?」
「聞こえりゃそれでいい」
ユウトは何も言わなかった。
聞こえなかったのかもしれない。
ガルドはスプーンを置く。
「ここが変なんじゃない。
外がせわしないだけだ」
ミリアは、少し考えてから笑った。
「じゃあ、ユウトは?」
「合ったんだろ」
それだけ。
昔から、こうだった。
誰かが来て、誰かが去る。
宿は残る。
それを思い出しただけの、昼だった。




