第4話 猫が増えた気がする
朝、裏口を開けると、猫がいた。
灰色で、少しだけ太っている。
ひだまり亭の常連だ。
「おはよ」
声をかけても、返事はない。
それでいい。
ミリアが水を替えていると、もう一匹いた。
茶色。
昨日はいなかった……と思う。
「……あれ?」
灰色のほうが、ちらっとこちらを見る。
茶色は、完全に無関心だ。
「増えた?」
問いかけても、答えは出ない。
昼前、ユウトが外に出てきた。
「あ、猫ですね」
「ね。増えてない?」
ユウトは二匹を見て、少し考えた。
「前から二匹じゃなかったですか」
「そうだっけ?」
自信がなくなる。
ガルドが来た。
「猫、増えたな」
「やっぱり?」
「いや、知らんけど」
知らないのに言う。
町の人は、だいたいそんな感じだ。
午後には、三匹になっていた。
黒いのが一匹、日陰で丸くなっている。
「……増えてるよね?」
今度は確信があった。
「増えましたね」
ユウトも言った。
でも、特に何も起きない。
追い払うでもなく、
餌をやるでもなく、
猫は猫のまま、そこにいる。
夕方、雨が降りそうな空になった。
いつの間にか、二匹しかいない。
「減った?」
ミリアが言うと、ユウトは首を振った。
「たぶん、移動しただけです」
なるほど、そんな気もする。
夜、雨が降った。
窓の外で、何かが鳴いた気がしたけど、
確かめには行かなかった。
朝。
裏口を開けると、猫がいた。
一匹。
灰色で、少しだけ太っている。
「……おはよ」
猫は欠伸をした。
増えたのか、減ったのか。
そもそも、数えていいものなのか。
ひだまり亭では、
そんなことは、あまり重要じゃない。




