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ひだまり亭の、急がない時間 ~異世界に来たけど、特に目的もなく生きてます~  作者: 九条 綾乃


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第20話  抜けない剣とカボチャ

 

 朝、リナが桶を洗っていた 。

 不器用な手つきだが、ユウトは何も言わない 。


「……おはよう」


「おはよう」


 ユウトは薪を割り始めた 。


 昼前、ガルドが来た 。

 背中に、布で巻かれた長い塊を背負っている 。


「よう、ユウト。……これ、抜けるか?」


 ガルドは剣をテーブルに置いた 。

 重い音がした 。


「都に届けるんだ。噂じゃ、選ばれた勇者にしか抜けないんだとよ」


 ガルドが力を込めるが、鞘から微動だにしない。


「呪われてるのか、俺が勇者じゃないのか。どっちにしろ、びくともしねえ」


 リナが皿を運びながら、その剣を一度だけ見た。

 一瞬だけ足を止め、目を見開いたが、すぐに目を逸らした。


「抜けないなら、ただの棒だな」


  ユウトは興味なさそうに言った 。


 ミリアが厨房から顔を出した 。


「あ、ユウト。カボチャ、切って」


「わかりました」


  ユウトはテーブルの上の剣を手に取った 。

 特に力を入れた様子もなく、柄を引く 。

 

 シャリン、と音がした 。

 刃が白く光る 。

 リナの手が止まった。

 ガルドは黙った。


 ユウトはそのまま厨房へ入り、カボチャに刃を下ろした 。

 ストン、と音がする 。


「これでいいですか」


「助かる。切れ味いいわね」


「重さに任せるだけですから」


 ユウトは剣を鞘に戻し、テーブルに置いた 。

 ガルドが掴むが、やはり一分も抜けない 。


「……お前な」


「お待たせ。スープできたよ」


 ミリアが鍋を持ってきた 。


 午後は、雨が降りそうな空になった 。

 猫が箒立ての隣で丸くなっている 。

 リナは、自分の杖の隣にある剣を、ぼんやりと見ていた。


「今日も平和だったね」


 ミリアが言った 。


「そうだな」


 それでいい 。

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