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第15話 数が合っている
朝の仕込みは、いつも通りだった。
ミリアは野菜を切り、
ユウトはスープを温める。
「今日は三人分ですね」
「そうだね」
それで進む。
開店してすぐ、客が来た。
一人。
次に、もう一人。
昼前に、もう一人。
ミリアは、無意識に数える。
「……三人ですね」
「うん」
スープをよそう。
器を並べる。
どれも足りている。
昼の終わり頃、ガルドが来た。
「混んでるな」
「今日は、そうでも」
「いや、なんとなく」
ガルドは首をかしげながら座る。
追加で火を入れる。
量は、足りる。
午後。
片付けながら、ミリアが言う。
「今日、多かったですよね」
「そう?」
「はい。なんか」
「でも、全部合ってる」
器の数。
椅子の数。
残ったスープの量。
どれも、合っている。
夕方、猫が現れる。
丸くなって、寝る。
「今日は静かでしたね」
「そうだね」
静かで、足りていて、
何も余らなかった。
なのに。
閉店後、ミリアは棚を見て、
一瞬だけ立ち止まる。
「……最初から、こうでしたっけ」
「何が?」
「いえ」
灯りを落とす。
数は、合っている。
それ以上、確かめる理由はなかった。




