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第12話 何もしない支度
朝、ミリアは棚を見た。
毛布は出ていない。
薪の量も、いつもと同じ。
「……冬支度、します?」
ユウトは包丁を置いて、少し考える。
「まだ、いいんじゃない?」
「そうですね」
それで終わった。
昼前、常連が来る。
「寒くなったな」
「ええ」
「冬支度は?」
「まだです」
「まあ、そうか」
納得したように、席に着く。
午後、風が強くなる。
扉の隙間が鳴る。
ミリアは布を詰めようとして、やめた。
「今じゃなくても」
誰に言うでもなく、そう言った。
猫は丸くなる。
それ以上はしない。
夕方、スープを少し多めに温める。
火を、ほんの少しだけ強くする。
新しいことは、それだけ。
夜。
「結局、何もしませんでしたね」
「うん」
「大丈夫ですかね」
「たぶん」
外は冷える。
中は、まだ足りている。
支度は、していない。
でも、困ってもいない。
ひだまり亭は、
今日も、明日のまま眠る。




