1話弾かれた者
ここは…どこだろうか。
もうずっと漂っている気がする。
自分は誰で、何のためにここにいるのか
しばらく経ったころ会話が聞こえてきた。
「どうしてここまで進行させたのだ?!」
老人のような声が怒鳴った。
「すみません…監視網を全て突破されていました」
別の女性がすかさず謝っていた。
「こうなっては仕方ない、生を受けるのは許してやれ、ただし何も与えるなと全ての神々に伝えておくように」
老人は冷たくそう言った。
「わかりました」
女性が喋った時、薄らと老人と女性の2人組が見えた気がした。その時の女性は少し不気味な笑みを浮かべてた気がする。
そんなことを考えているといつのまにか視界が暗くなった。先ほどのような何もわからないというわけではない。そこに世界はあって、まだ瞼を閉じている状態だった。
「元気な男の子ですよ〜!」
そうか、俺は生まれたのか…前世があるのだろうが思い出せない。それにしてもこの鳴き声、自分ではどうにかならない者なのだな…
誕神歴732年
後に世界を揺るがす人物が産声を上げた瞬間だった。
この人物の誕生に不思議な感情を抱く者たちが世界に何人か存在した。
砂漠で1人焚き火をしている人物。
森の中で狩人から逃げる獣
王宮を歩く世話係
堅牢な牢に収監されている老人
これら全ての人物が今この瞬間同じ方向を見上げた。
北西星の海が広がる向こうに広がる一筋の星「ラメトロン」全員がその星を見たのだ。
誕神歴737年、ある一般家庭に産まれた男の子は5歳になった。
「ここまで大きくなれば出来ることも増えるな」
男の子は家の近くの開けた場所で体を動かしていた。まだ拙い…それでも筋が見える。熟練の戦士が病み上がりのリハビリをしているような動きだった。
「おい!見ろ!忌み子だ!忌み子!」
そうこの男の出自は母親が大魔族、父親がドラゴンだったのだ。両目の色は別々であり、形の悪い片角、ところどころに見える鱗。一般人からすれば異形そのものだった。魔力で伸縮可能な翼も持っていた。
「そんなことないもん!」
男の子は否定した。自分を産んでくれたのが他の子達と違うことも、それが普通でないことも分かっていた。でも認めたくなかった。自分を愛し、育ててくれた人を馬鹿にされているような気分だった。
「スキルだって持ってないじゃないか!」
スキルそれは生まれにして誰もが持つ不思議な力。男の子にはそれがなかった。そう、何一つなかったのだ。
「スキルなんか無くたってきっと強くなれるもん!」
それでも男の子は否定した。
「おいおい、、それは大悪党ヨルムンガンドの話だろ!悪党になりたいのか!?今ここで倒してやる!」
男の子は殴られ蹴られリンチにされた。でも種族特有のタフさと頑丈さで先はバてたのはいじめっ子たちだった。
男の子は家に帰った。