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自由の星の下で  作者: そーゆ
自由を求めて
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第十五話:自由の占領

1958年3月中旬、ドイツ・レーテ社会主義共和国は、崩壊の淵に立っていた。ヘルベルト・フラームがパウルスブルクで宣言した「影に光を」の言葉は、ルスラントの反乱を燃え上がらせ、フライエス・オイローパ(市民同盟自由欧州)の旗を凍てつく大地に掲げた。ルスラント、ヴォルガ、バルト、ルテニア――レーテ大管区の四つの心臓が、反乱の炎に染まった。ゲルマニアのアルベルト・シュペーアは、鉄の意志を誇ったが、赤剣団の銃口は民衆の怒りに屈しつつあった。ノイシュタットの団地では、マンフレート・ベルンハルトとナディア・シュミットが、自由の夢と恐怖の間で新たな一歩を踏み出す。ルスラントの占領は、希望か、さらなる血か――その答えは、まだ誰も知らなかった。


反乱の拡大

ヘルベルト・フラームの宣言は、ルスラントを超え、レーテ全土に火をつけた。パウルスブルクの人民広場で赤い旗を掲げた彼の声は、テレビ塔の放送を通じて、ヴォルガの鉱山、バルトの港、ルテニアの農村に届いた。一度は赤剣団に鎮圧された地域で、フライエス・オイローパの反乱が再び火を噴いた。民衆は、配給の不足、強制労働、監視の鎖に耐えかね、武器を手に立ち上がった。


ヴォルガでは、鉱山労働者が監視塔を破壊し、工場を占拠。人民軍の寝返り兵が、装甲車を民衆に明け渡した。バルトの漁民は、港を封鎖し、ゲルマニアへの物資を止めた。ルテニアの農民は、党の倉庫を焼き、食糧を村に分配した。これらの反乱は、組織化され、フライエス・オイローパの赤い腕章が団結の象徴となった。ルスラントは、その中心だった。パウルスブルクの工場、クルスクの鉱山、ノイシュタットの団地――反乱軍は、都市の半分を占領し、赤剣団を郊外に押し返した。


ゲルマニアのテレビは、反乱を「テロリストの暴動」と報じたが、誰も信じなかった。フライエス・オイローパの放送が、ラジオを乗っ取り、フラームの声を流した。「同志よ、ルスラントは自由の火種だ。ヴォルガ、バルト、ルテニアと共に、シュペーアの嘘を打ち砕く!」民衆の歓声が、凍てつく大地を震わせた。四つの大管区の大部分は、フライエス・オイローパの占領下に陥った。


ゲルマニアの人民宮殿は、静寂に包まれていた。アルベルト・シュペーアは、党指導部の会議室で、地図を睨んでいた。ルスラント、ヴォルガ、バルト、ルテニア――赤いピンが、占領地域を示す。「繁栄」の約束は、反乱の炎に焼き尽くされた。赤剣団の報告は、冷酷だった。「パウルスブルクの半分が陥落。人民軍の三分の一が寝返り。増援は、ルスラントの抵抗に阻まれている」


シュペーアの側近、軍司令官ハルトマンが進言した。「指導者閣下、総力戦を。ルスラントを焦土にし、反乱を根絶すべきです。フラームは、ただの扇動者です」だが、シュペーアは首を振った。あのクーデターでホーネッカーを葬り、ラデックを「死」に偽装した彼は、力だけでは民衆を抑えられぬことを知っていた。「ハルトマン、ルスラントを焼けば、レーテ全土が燃える。フラームは、狂人ではない。彼には、民衆の心がある」


シュペーアは、窓からゲルマニアの灰色の空を見た。あの時、演説で、彼は改革を誓った。だが、ルスラントの反乱は、その誓いを嘲笑う。彼は、机の通信機を手に、側近に命じた。「フラームとの対話を模索しろ。一部の大管区の自治を条件に、停戦を提案する。民衆の血は、もう十分だ」彼の声には、冷酷さと疲弊が混じっていた。側近は、驚きを隠せず、頷いた。「了解しました。だが、フラームが応じる保証は……」


「保証などない」シュペーアは、切り捨てた。「だが、ルスラントを失えば、レーテは終わる。動け」ゲルマニアの指導者は、初めて妥協の道を選んだ。だが、その選択が、フライエス・オイローパの炎を抑えるか、新たな火種を撒くか、誰も知らなかった。


ノイシュタットの団地は、フライエス・オイローパの要塞と化していた。マンフレート・ベルンハルトとナディア・シュミットは、第十四話の決意を胸に、反乱の渦に飛び込んだ。団地の広場は、バリケードと赤い腕章で埋まり、労働者、寝返り兵、若者が武器を手に戦っていた。マンフレートは、鉄パイプを握り、ビラを配る。ナディアは、食糧を運び、負傷者に水を渡す。二人の心には、自由の夢と恐怖が交錯していた。


マンフレートは、広場のラジオでフラームの声を聞いた。「ナディア、ルスラントだけじゃねえ。ヴォルガも、バルトも、ルテニアも戦ってる。フラーム、すげえよ。俺たち、勝てるかも」彼の瞳には、第十二話のビラが灯した希望があった。だが、罪悪感――[[///検閲済///]]の消された名前――が、胸を締め付ける。「でも、俺、[[///検閲済///]]を売った。彼女も、こうやって戦いたかったのかも」


ナディアは、少年の手を握った。第七話の恐怖――赤剣団の銃声、吐き気の悪夢――が、彼女を縛る。だが、第十四話の決意が、彼女を支えた。「マンフレート、[[///検閲済///]]のこと、悲しいよ。でも、あなたが戦ってる今、彼女、喜んでると思う。私も、パパとママの分まで戦うよ。フラームが言ったよね? 光を取り戻すって」


広場の中心で、フライエス・オイローパの女リーダー、エレナが二人に近づいた。あの日出会った彼女は、フラームの直属だった。「マンフレート、ナディア、よくやってる。パウルスブルクから連絡だ。フラームが、シュペーアと話すかもしれない。けど、戦いは止まらねえ。赤剣団が逆襲してくる。お前ら、準備しろ」


マンフレートは、目を輝かせた。「フラームに会えるか? 俺、直接話したい。ルスラントをどうするつもりか、聞きてえ」エレナは、微笑んだ。「同志、焦るな。フラームは、ルスラント全土を見て動く。お前らの仕事は、ノイシュタートを守ることだ。武器庫の鍵、渡す。使えるか?」


ナディアが、少年の前に出た。「使えるよ。私も、戦う。教えて、エレナさん」彼女の声は、恐怖を越えていた。マンフレートは、ナディアの背中に、成長を見た。「よし、ナディア。俺たち、一緒だ。フライエス・オイローパのために、ルスラントのために」


その夜、ルスラントの占領地域は、フライエス・オイローパの旗で埋まった。パウルスブルクの工場は、民衆の拠点となり、クルスクの鉱山は、武器の生産を始めた。ヴォルガ、バルト、ルテニアは、ルスラントと連帯し、ゲルマニアの鎖を拒んだ。だが、赤剣団の逆襲が、迫っていた。ゲルマニアの増援――戦車と空軍――が、ルスラント国境に集結した。


ノイシュタートの団地で、マンフレートとナディアは、バリケードを守った。鉄パイプとライフルを手に、赤剣団の銃声を聞く。二人の心には、[[///検閲済///]]の笑顔、フラームの宣言、自由の夢が響く。シュペーアの対話は、ルスラントに届く前に、炎に試される。マンフレートは、ナディアの手を握り、呟いた。「ナディア、俺たち、勝つよ。光を、取り戻すんだ」


ナディアは、微笑んだ。「うん、マンフレート。一緒なら、怖くないよ」彼女の声は、ルスラントの凍てつく闇に、確かに灯りをともした。それは、フライエス・オイローパの炎と共鳴し、欧州の影を焼き尽くす火種だった。

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