王への報告書
真にして公正な統治者たる国王陛下に
このたび献上いたします書簡は、つい先般恐れ多くも陛下の祖父王が愛用された執務机の隠し抽斗より発見されたものです。すでにお耳に入っている通り、叛逆者セオレクトゥスが陛下のものでありますところの王位を僭称した際、いっとき件の執務机はかの叛逆者の物するところとなりました。この書簡はその間に叛逆者自身の手によって秘匿されたと思われます。
ご覧いただけます通り、書簡は発見されたときから状態が非常に悪く、握りつぶされたような皺も、右下より広がります焼け跡も、発見当初そのままにございます。また末尾のルメ俗語による乱文は、かの叛逆者が書き足したものと考えるが適当と思われます。(陛下がご高覧になるには不適切な語が含まれることをどうかお許しください!)
真にして公正な国王陛下、この書簡も含めた新たな一連の証拠品の提出をもって、わたくしはニトルス・ピィラヌス教会博士の処刑が事実無根であったことを主張いたします。何よりも彼の「叛逆者のもっとも親しき友にして叛逆の支持者」という永遠の汚名が雪がれることを希求いたします。彼が貴族に、そして――お慈悲をおかけください、陛下――至尊の王家に、忠誠を誓わなかったのは事実であります。しかし彼はまた、叛逆者の友であることも最後には拒否したのです。ですから彼は実に三十年ものあいだ、濡れ衣によって辱められてきたことになります。
陛下、没後も多くの信徒に慕われる彼の徳高さを考慮すれば、彼が天上で不滅の名誉にあずかったことは疑いようもありません。しかし彼の地上での名誉もまた回復されることを、わたくしは望んで止まないのです。真実を明らかにし徳高き人々を称えることは、王国の統治を強固にし、陛下御身の徳を諸国に知らしめることに他なりません。
書簡は古教会ラフォス語によって書かれているため、陛下の便宜のために、不肖を顧みず翻訳を附させていただきました。わたくしの行き届かないところはシルディウス大司教猊下に諮問いただければ、彼は明瞭なお答えを陛下に奉じることでしょう。
首席判事 ラグアティウス・エルアルドゥス