プロポーズ
私の名前は佐藤華、どこにでも居るような社会人。そんな私には3歳年下の彼氏がいる。彼の名前は早瀬瑛斗。私たちは5年付き合っていて同棲もしている。これからも当たり前に幸せに暮らしていけると思っていた。しかし、私たちに思わぬ悲劇が襲いかかってきた。
今日は私の誕生日の前日。瑛斗どんなプレゼントくれるかなー。楽しみだな。
私は明日が楽しみでうきうきしていた。そんな浮かれている時誰からか電話がかかってきた。
「もしもし。」
「もしもし早瀬瑛斗さんの交際相手の方でお間違いないでしょうか。」
「はい、そうですけど。」
「今早瀬さんが交通事故に遭いまして、意識不明の重体で、今すぐ中央病院に来て頂けないでしょうか。」
「え…」
私は慌てて病院へと向かった。
病院に着くと看護師の方が待っていて、手術室の前に連れていかれた。待っている間今までの思い出がフラッシュバックして来た。きっと無事だ、元気に戻ってくる、そう言い聞かせた。手術中人の出入りが多く慌てた様子で気が気ではなかった。手術が成功するようずっと神様にお願いをし続けた。数時間がたった後手術が終わり扉が開いた。その中から医師の方らしき人が出てきた。私はすぐその人に
「あの、瑛斗は大丈夫なのでしょうか。」
と聞いた。すると、その人は重く首を横に振った。
「申し訳ございません。最善を尽くしたのですが。」
私は泣き崩れた。大好きな瑛斗がこんなにも早く先立たれるなんて思ってもいなかった。年寄りになってもずっと一緒に暮らしてくんだと信じていた。しかし、それは一生叶わないものとなった。
病院で悲嘆していたところに案内してくれた看護師が近づき、話しかけてきた。
「早瀬さんは車を運転していたところ、信号無視をしたトラックとぶつかってしまったみたいです。」
私はそれを聞いて疑問に思った。瑛斗は車の運転が下手でいつも運転は私がやっていた。車を運転したがらなかったのだ。しかも中央病院は家から遠いところで、なんでそんなところまで苦手な運転をしに行っていたのだろうと。
「瑛斗いつも運転なんてしないのに、なんで。」
私がそう呟くと、 看護師さんがあるものを見せてきた。グルメ雑誌だった。その雑誌には1つ付箋が貼られていた。そのページを開いてみると、昔私がここでプロポーズされてみたいと言っていたお店の紹介ページだった。そしてそこには『絶対ここでプロポーズする!!』と大きく瑛斗の字で書かれていた。
「瑛斗覚えてたんだ。」
「これは私の推測ですが、あなたをここに連れてきてプロポーズしたかったのではないでしょうか。これ、早瀬さんが亡くなるまでずっと握ってたものです。」
と、小さい箱を持って来て私に渡してきた。それを開けると中に入っていたのは綺麗な指輪だった…。
「もう、瑛斗のばか。」
私はその指輪を薬指にはめ、嬉しさと悲しさに押しつぶされそうになった。