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2 追放者パーティーのリーダー


 「え? メンバーに加入したい? ごめんよ。 今は人手が足りてるから」

 「スキル【速走(ダッシュ)】? あぁダメダメ。 そんな雑魚スキルじゃうちには加入させれないね」

 「魔法も体術も剣術も出来ない? キミ本当に冒険者なの?」


 数多くの冒険者を募集しているパーティーに足を運び面接を受けるものの、すべてその場で蹴落とされる事12グループ目。

 時刻は気付けば昼を過ぎあと1時間もすれば夕暮れになる時間まで差し掛かっていた。


 「うぅ・・・ボクは一体どうすれば・・ッ」


 この街へやって来て1年を迎えようとしていた。

 憧れの冒険者になる為に遠い田舎から上京して訪れ、少しずつ稼いだ金銭でギルドへ登録する事が出来た。

 冒険者や何かしらの兵団の経験のない者はその場でステータス更新をされる為、稀にスキルを発現する事がある。

 しかし、ナナシノが発現したスキルは【速走(ダッシュ)】。

 普通の人よりも多少速く走れるだけの冒険には役に立たない雑魚スキルだった。

 その為、最初は全然加入できなかったが先日までメンバーとして入れてもらっていたパーティにも追放されてしまった。


 「やっぱり冒険に必要なスキルも経験もないボクじゃあ何も出来ない役立たず。 冒険者になんかなれな・・・ん?」


 そうして、もう何度訪れたかも分からないギルドの掲示板に視線を向けると、掲示板の端に別のパーティー募集に隠れてある貼り紙がある事に気付く。

 

 「・・冒険者大募集。 条件、()()()()()()()()()()()()()のみ・・・?」


 その貼り紙は正に、ナナシノにとって暗闇に輝く小さな光が灯されたような希望の要望だった。



 「すいません! この冒険者募集の貼り紙を見たのですがッ!!」


 ナナシノはすぐに記載された面接場所へ訪れた。

 場所はギルドから少し離れた路地裏にある建物。

 昼間は人通りが少なく、夜になると際どい服装を着た女性やガラの悪い男性達の通りが増えるあまり治安が良い場所ではない。

 それでも、ナナシノにとってこれほど条件が見合う募集は他にもなく、多少怯えながらもここまでたどり着いた。

 建物の1階は小さな魔法具店を経営しているようだが、営業しているのかどうかも分からない薄暗い空間が広がっている。

 そんな魔法具店の横に階段があり、今回ナナシノが訪れた冒険者パーティーの拠点がある。

 かなりの間、整備もされていない為か2階に繋がる階段も周囲の壁もボロボロだ。

 そうしてようやく辿り着いた扉は以外にも建物とは裏腹にとても綺麗で上品な扉が建てられている。

 素人ながらでもつい最近リフォームでもしたのだろうと思わせるくらい整備されている物だ。

 

 ノックをして勢いに任せて部屋に入る・・・が、返事は返ってこず、部屋の中に人の気配はない。

 部屋の中は冒険者の拠点というよりかはギルドのような仕事場の事務所のようだ。

 訪問者ようのソファーが並べられ、キレイに整理された書類棚。 

 そして扉を開けた正面にある窓の前に設置された立派な仕事机がある。


 「おや? 誰か来たのかな?」


 扉から入って右側から落ち着いた女性の声が聞こえ振り向く。

 そこには片手に湯気が出たコーヒーカップを持つ綺麗な女性が立っている。

 綺麗な白髪で整った顔立ちに似合う丸い眼鏡をかけ、雑誌に載っていても不思議ではない綺麗なスタイルをした女性だ。

 その容姿はまだ15歳の少年にとって十分魅力的で、ナナシノは身体を硬直させて見惚れていた。


 「ん? どうかしたのかい? もしかして迷ったのかな?」

 「あ、いえ! す、すすすみましぇん!」


 噛んだ。

 

 「・・・ふふ。 そう緊張しないでおくれ。 そうだな。 まずは自己紹介でもしておこうか」


 女性はゆったりとした足取りで仕事机に向かい、カップを置いて椅子に座りこむ。

 その動きだけを見てナナシノは思う。


 (この人・・・()()・・ッ)


 「あぁ、すまない。 申し訳ないが吸ってもいいかな?」


 女性は机の上に置いてあった煙管(キセル)を手に持ち、ナナシノに許可を伺う。


 「あ、大丈夫です!」

 「そうかい? それじゃあ遠慮なく」


 慣れた手つきで煙管に火を点け煙を吸い上げる。


 「それじゃあ、自己紹介を。 私はここの冒険者パーティーのリーダーをしている。 名をマリーンと言う。 気さくにマリと呼んでくれ」

 「あ、えっと・・マリ、さんですね。 ボクはナナシノと言います! 年齢は15歳! ここには冒険者募集の貼り紙を見てきました! よろしくお願いします!」


 深々と頭を下げ、直角90度まで腰を曲げる。


 「ん? 冒険者募集の貼り紙? おかしいな。 あの貼り紙には確かパーティーを追放された者のみと条件に記載していたはずだが?」

 「あ・・はい。 その、追放された者・・です」

 「・・・・・」


 マリは数秒の間、ポカーンとした表情をしたのち、外にこぼれくほどの大声で笑った。

 「ふむ・・退屈だな」


 慣れた煙管を吸い、窓から差し込む穏やかな日光を浴びながらマリは暇を持て余していた。


 「メンバー達も各々用事に出てしまったし、私も残った仕事をやりきりたいが・・・」


 机に並べられた大量の資料に視線を向ける。


 「・・・うん。 まずはコーヒーでも飲もうかな」


 仕事は飲んでから考えよう。

 それよりも何か楽しい事が起きないか。

 そんな事を考えながらマリは椅子から立ち上がり、コーヒーを淹れに行った。


 お湯を沸かし、あとはカップにコーヒーを淹れるだけの状態になった時だ。


 「・・・ん? 今誰か来たのかな?」

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