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11 相棒


 『 合同クエストに登録されている冒険者様は中央フロアに起こしください。 繰り返します。 合同クエストに登録されている―――』


 まだ日が昇り始めたばかりの早朝から、ギルドは慌ただしくなっていた。

 なんでも今日は北部にある神域への調査の為、ギルドが募集して選別した冒険者が合計50人ほどが集まり調査へ赴くらしい。

 周囲を見た渡せばCランクからAランク冒険者のパーティが出そろっている。

 そんな中、プルプルと涙目になりながら壁際に立っているナナシノの姿があった。


 (むりむりむりむりむりむりッ! ななななななんでボクがこんな大ごとなクエストに?!)


 話は今日から一週間前に遡る。

 神域の主、フェンリルをテイムしたというマリの証言から始まった。

 もしもテイムしたフェンリルが原因不明の消滅をした北部の神域の主であれば、神域が消滅した原因が分かるかもしれない。

 しかしSランククエストとされる神域の主が別の神域へと移り住む異常事態となれば普通の冒険者パーティーでの調査は危険とギルド側が判断。

 その為に集結させたのが合同クエストというわけだ。

 後方支援となるC~Bランク冒険者から前衛となるAランク冒険者が募り、1つの大きなパーティとなってクエストへ挑む大型パーティーが結成される。

 ただ、これらの冒険者はギルド側の職員が1人1人の冒険者のクエストなどの経歴を確認して選別するものとなっている。

 つまり、ここには実力がギルド側から冒険者としての実力が認められている者達が集まっている訳なのだが・・・。


 「おい。 あそこのガキ。 確か1人でフェンリルを討伐したとかいう・・」

 「討伐? 俺はテイムしたって聞いたが?」

 「いやいや。 なんでも短剣一本で倒したとかなんとか」

 「フェンリルを短剣一本で? そんなのSランクでも無理だろ?」

 「いやマジで。 しかもフェンリル相手に傷1つ着く事もなく倒して服従させた結果がテイムだとか」

 「服従?! フェンリルを!?」

 「まじかよ。 化け物じゃねぇか」


 (ひェェェええええッ!!)


 ナナシノがフェンリルを倒したという話は大きく誇張され噂が流れており、目の前に通る高ランクの冒険者から品定めされてるような視線を感じ、この場から立ち去りたい気持ちで一杯になっていた。

 

 (やっぱり無理だッ! やっぱり帰ろうッ! マリさんには明日朝一に謝りに――)


 撤退しようと人の隙を蛇のようにすり抜けてギルドの出口についた時だ。


 「ちょっと待ちな。 アンタ何処に行こうってんだい?」


 女性の声が聞こえたと同時に背後から首根っこを掴まれ止められた。

 首を横に向けて視線を後ろに向けると、そこには今にもナナシノを殺すのではないかと言わんばかりの殺気ある鋭い目つきで睨んできている少女と目があった。


 「ひィややァァア嗚呼ァあぁああッ!」

 「うわ! びっくりした!」


 今まで同年代の異性と会話をしてこなかった事で発生した人見知りと初対面の異性に睨まれた事での精神面が崩壊した感情から、ナナシノは大声で叫んでしまった。

 目つきの悪い少女もそんなナナシノに驚いた様子だが、それでも首根っこは放そうとしなかった。


 「何よ急に。 今日から()()()()()()()()相棒に対して失礼じゃない?」

 「あぁァあぁァあ・・・相棒?」


 少女のセリフに怯えていたナナシノの感情がピタリと止まった。

 大人しくなった事で少女はようやく首根っこを放してナナシノと向き直る。


 「そ。 今日から神域の調査としてアンタとパーティーを組む事になったアイリス・ローレンスよ。 今日からよろしく」


 握手をする為の右手を前にだして最大限の笑みを浮かべるアイリスだったが、実際にその表情を目の辺りにしたナナシノと周囲の冒険者からは、暴力を楽しむ殺し屋のような笑みに見えてナナシノはその場で泡を吹いて倒れた。

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