10 成長させる為に ~3~
「どうして・・一体なにがどうなってSランクの魔物をテイム出来るの? こんなの前代未聞よ。 いや、でも相手はマリさんだしありえない事でもないんだけどだったら申請は討伐ではなく最初っからテイムにしてもらわないとこっちの後処理が―――」
床に座り込み頭を抱えてブツブツと独り言を続ける横で、マリーンは2個目の煙管を吸い始めた。
「因みにいっておくが、クエストのランクについては私は嘘を言ったつもりはないよ」
「だからこの人はいつもいつも問題ばかりを―――え? どういう事ですか?」
マリーンの言葉にララは意識を取り戻す。
「確かにあのフェンリルは実際の実力ならSランクで間違いないだろう。 だけどあれは本来もっと北にある神域に生息するフェンリルだ。 それがこんな人間の国に近い神域に出現したんだ。 何か理由があってかなり消耗していたよ。 それもあって私達が出会った時にはAランク並みの実力しか発揮できていなかった」
「・・・それってまさか」
「うん。 あのフェンリルは神域の主だ」
それを聞いたララは慌てた様子で部屋を出た。
「あの、マリさん。 神域の主とは?」
「うん? 聞いた事がないかい? 一定の神域には魔物の上下関係のような物があってね。 神域の力を多く身に纏い生まれた魔物を神域の主と呼ばれてるんだよ」
マリは煙管を深く吸い込みゆっくりと煙を噴き上げる。
「神域は他の自然よりも魔素が貯め込まれた場所で精霊が住み着く場所でもある。 それだけ濃い魔素が凝縮された土地であれば魔物のような生命体が誕生するようになるんだ」
そしてその魔物の中で多く魔素を取り込み誕生した神域の主。
これらを多くの冒険者は別名で【神獣】とよばれる事もあるという。
「でも、ありえなんじゃないですか? 魔物は神域から外に出る事はできなんですから」
魔物は本来、自身が誕生した神域からは出る事が出来ないようになっている。
魔素が少ない自然の世界では魔力切れを起こしてそのまま消滅してしまうからだ。
その為、魔物が神域から出て別のエリアへ移動する事は常識的に言えばありえないことだった。
「それがそうでもない。 私も1度しか見た事がないが、神域の主は稀に自分が生まれた土地を放れて別の神域へと移住する事がある」
「そうなんですか!」
「うん。 でもそれには色々な理由があると言われている。 例えば神域の魔素が何かしらの理由で減少して住めなくなったり、もしくは何か外部から神域を侵食されてしまった場合などがあるみたいだ」
「神域を侵食って・・そんな事できるわけが」
マリーンの言葉を否定しようとした時、先ほど出て行ったララが髪をボサボサにして息を上げながら片手に書類を持って戻って来た。
「ありましたマリさん。 今から3日前。 ここから北部の神域が謎の消滅を冒険者が確認しています」