エピローグ
すみません、前回までが第四章とお伝えしましたが、エピローグを投稿し忘れていました…
このエピローグまでが第四章となります。また、次の第五章1話目も併せて本日更新しています。
「……済まないが、もう一度聞かせてくれないか、セレスタン」
王都サンヴィクトワールに帰還して間もなく。ファルギエール伯爵家の王都別邸、その執務室で副官の騎士セレスタンより報告を受けたツェツィーリアは、呆然としながら返す。
「はっ。アルンスベルク要塞からの報告によると、敵陣からの情報収集の結果、マティアス・ホーゼンフェルト伯爵の戦死が判明したそうです」
「それは、間違いないんだな?」
思わず問いかけてから、副官として報告の伝達任務をこなしているにすぎない彼にこのような質問をしても無意味だったかと、ツェツィーリアは自分自身に呆れを覚える。しかし、セレスタンはより詳細な情報を得ていたようで、さらに続ける。
「情報が情報だけに、前線の方でも重ねて確認が行われたそうです。その結果、敵が後退した先の野営地にて確かにホーゼンフェルト伯爵の火葬が行われ、養子のフリードリヒ・ホーゼンフェルトが爵位とフェルディナント連隊長の職を継いだとのことです。火葬に立ち会った目撃者の数を考えても、伯爵の戦死を疑う余地はないと」
「そうか…………そうか。そうなのか」
死んだ。ついに。マティアス・ホーゼンフェルト伯爵が。
勝った。家族を奪った仇敵に勝利した。自分の講じた策で彼を倒した。
それを自覚した瞬間、心の奥底から歓喜が湧き、目には涙が溢れた。
思わずその場に膝をつき、心配そうに数歩歩み寄ったセレスタンをよそに、ツェツィーリアは天井を仰ぐ。高鳴る胸を押さえ、感極まった表情を浮かべる。
「嗚呼、神よ……」
自分は成し遂げた。父を討ち、そして母と弟をも自分から奪ったエーデルシュタインの生ける英雄を、ついに倒した。エーデルシュタイン王国は依るべき英雄を失い、彼が迎えたという養子は、得たばかりの父を奪われた。かつて彼に家族を奪われた自分のように。
この日のために努力を重ね、実績を重ねてきた。軍人になったときから、いや、家族を全て失った六歳のあのときから、この日を迎えることを夢見てきた。
父と母は、神の御許から見てくれているだろうか。喜んでくれているだろうか。弟マクシミリアンも、父母と一緒に神の御許で見ているのだろうか。
きっとそうだ。彼らは偉業を成し遂げた自分を見守りながら、喜んでくれているに違いない。
ツェツィーリアは涙を流しながら、今はただ喜びに溺れる。




