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悪女と嘘つき魔術師  作者: ミュウ
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8.宿へ

「やぁそこの綺麗なお姉さん、ちょっとお訊ねしたいのだけれど…?」

 マーリンは笑みを浮かべ町を歩く女性に声をかける。

「…は、はいっ! 何でしょうか?」

 女性はマーリンの顔に見とれていたのかしばらくポーッとしていたらしい

(…天然タラシ…天然?いえ、意図的ね)

 ソロンは女性と仲良く話をするマーリンを遠目に観察する。

(…まぁ本当に顔は良いのよね)

 整った顔、長めの白銀の髪、宝石のような赤緋色の目

(これで性格さえ難がなければ…)

 ハァ…とカメリアにいた頃のマーリンの素行と被害者達?を思い出し、ため息をつく。

「うーん…僕なりの誠意は尽くしてたと思うんだけどなぁ…」

 いつの間にか傍らにはマーリンが苦笑いで立っていた。

「……私、声に出してたかしら?」

 貴方の愚行とか。

「……僕ってそんな酷い男かな?」

「……少なくとも貴方のせいで泣いた女はいるわよ」

(まぁ主に、フラれて、だけど)

「それで?宿はありそうだった?」

「うん、この先に一軒だけ」

「空いてるかしら?」

「どうだろうねぇ…空いてることを願うよ」


「申し訳ないねぇ、生憎今日は一部屋しか空いてなくてねぇ……」

「一部屋……」

 元々それほど大きくはない宿、空き部屋は一部屋のみだった。

 店主は申し訳なさそうに眉を下げる。

「一応簡易ベッドのご用意は出来るのでお二人の宿泊は可能ですが……」

 どうします?と店の奥から店主の妻らしき女性が声をかける。

(流石に一晩、男女が同じ部屋なのは……)

 ソロンが嫌がるだろうと思ったマーリンは、せめてソロンだけでもと思い店主に声をかけようとする、が……

「それで構わないわ」

「ソロン?」

マーリンよりも先にソロンが口を開いた。

「ベッドが2つあるのならそれで構わないわ、お願いできるかしら?」

「えぇ、すぐにご用意させていただきます」

店主の妻はパタパタと部屋の用意に走る。

「ソロン、いいのかい?」

「あら?何か問題?」

「問題というか……嫌じゃないかい?」

「仕方ないじゃない、一部屋しかないのだもの」

「僕は野宿でも構わないよ?」

「……助けられてる身分でそんな事、させられるわけないでしょう?」

「ソロン……」

「そんなに僕のことを思って……」


「何か変なことしたら……迷わず刺すから」


「……はい」

 目が本気だ。

 絶対に変な気は起こさないと心に誓うマーリンだった。


暫くし、通された部屋は広いとは言いがたいが、綺麗に整えられており、ベッドもちゃんと二人分用意されていた。


ふぅ、と息をつきソロンはソファーに腰掛ける。

「ソロン、僕は少し出てくるからゆっくりしててくれるかい?」

「構わないけれど…どこに行くの?」

「町の探索と情報収集、明日スムーズに動けるようにね」

「それなら私も……」

立ち上がろうとしたソロンの両肩をマーリンはトン、と優しく押さえ再度座らせる。

「大丈夫」

「ソロンは今休むのが仕事だよ」

「僕が出てる間にシャワーでも浴びたらいい」

「確かにそうね」

「うん、即答過ぎない?」

「危ないもの」

「どんな時も警戒は怠るなって」

「怠るなって?」

「父が」

「…アイツは…本当…」

娘をどう育てたかったんだ……?

今は亡き旧友を思いだし頭を抱えるマーリンだった。


とにかく、いい子で留守番してておくれとマーリンは外へ。


ポツン、と一人残されたソロンは手持ちぶさたになる。

「……彼の言う通りシャワーでも浴びよう」

久々のお湯は頭の中をスッキリさせてくれた気がした。

「…っ」

足が沁みる。

よく見ると靴づれが出来ており少し血が出ている。

(……元々、長々歩く靴じゃなかったし仕方ないわね)

着の身着のまま飛び出したのだから。

シャワーを終え、宿屋が用意した部屋着に着替える

「流石に救急箱なんて無いわよね」

(血も止まったし…足はとりあえず放っておこう…)

「……ん?」

ふと備え付けのポットが目にはいった、近くには紅茶のセットも用意されている。

「お茶…飲みたい」

ポットの中は熱いお湯で満たされていた。

ポット自体に魔法石が埋め込まれており時間がたっても冷めない仕組みになっている。

今ではありふれた便利道具だ。

「…家にもあったな」

慣れた手つきで紅茶を淹れ、ソファーに座る。

少し多めに砂糖とミルクを入れ、ゆっくりと飲む。

じんわりと体が暖まる

全て飲み干す頃には目蓋が重くなっていた。

(…眠い……)

(マーリン……まだかしら……?)

襲い来る睡魔には勝てず、ソロンはソファーに座ったまま意識を手放した。



閲覧ありがとうございます。

諸事情により不定期更新です。ご了承下さい。

お暇な時にでも評価、ブクマ等いただけたら嬉しく思います。

よろしくお願いします。

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