11.二人の内緒と旅の始まり
マーリンがメタな発言をしていますが、お気になさらず。
理由は今後明かされると思います。多分。
「さ、先ずは服かな?」
襤褸のドレスじゃあ山も登れない。
「それに姿も隠せないからね」
質素な物でも、ここのような田舎町では少し浮いて見えてしまう。
「目立つわね」
ソロンもマーリンと同じことを思ったのか、頷き納得する。
「目立つだろう?」
「貴方が」
「え? 私かい?」
マーリンは心外だと言わんばかりに自らを指差す
「まるで奴隷商人だわ」
確かに、質素で襤褸なドレスを着た少女を連れ歩く見目の良い男
傍から見れば十分、怪しさが出ている
声をかけられなかったのが不思議なくらいに。
「……仮にそうだとして、それにしては商品が少なくないかい?」
「見たことあるの?」
「んー…ノーコメントで」
「…………」
ジリジリとマーリンから距離を取るソロン
「ソローン、無言で後退りしないでー」
「やっぱり貴方……」
「違う、違うよ? 落ち着いてソロン」
「この外道」
「うん! すごく勘違いをしてらっしゃる!」
「仲がよろしい事で、ご兄妹ですか?」
宿の店主は笑顔で二人に声をかける。
「あぁ二人旅でね、悪いね部屋でバタバタと騒いでしまって」
「出来の悪い兄が、二度寝した上に寝坊をしたもので」
「それは言わない約束だろう?妹よ」
「あらごめんなさい、お兄様」
「はっはっはっ!本当に仲がいい!それでは良い旅を!」
弁解をしたいマーリンと、警戒心MAXなソロンは、しばらく無意味な鬼ごっこをした二人は店主に、妙に息を合わせた嘘八百を述べ、宿を出た。
落ち着きを取り戻し、宿を出た後、二人は着々と町で装備を揃えていた。
水や食料、それらを入れる鞄、そしてソロンの新しい衣類を見繕う。
「いいじゃないか! よく似合ってる」
満足そうに頷き、どこかご満悦なマーリンの前には、そわそわしながらソロンが自分の体を確認していた。
「なんだか落ち着かないわね……」
ハイネックのトップス
黒のタイツ
ブラウンのショートパンツ
丈夫なロングブーツ
黒のローブ
なるべく動きやすく、目立たぬようシンプルなものをいくつか買い選び身につけた。
「……バレやしないかしら?」
「不安かい?」
問い掛けながら、少し俯いたソロンの顔を覗き込む
「……不安じゃないことなんて、あまりないわよ」
今も、昔も、と小さく呟き、逃げるようにマーリンから顔を背ける。
「……そうかもしれないね、まぁ大丈夫だよ」
元気を出しておくれ。
そっと、ソロンの頭をポン、と撫でる。
「疑われたら旅芸人だとか、宿のように兄妹と誤魔化せばいいし」
「幸運なことに私達は髪の色が似ている、なんとかなるさ」
「…でも……それでも、もしバレたら?」
「バレてしまえばそこで、全てが……終わってしまうわ」
「ソロン」
マーリンは輝くルビーの様な、揺らぎ、照らす夕日の様な、赤緋色の瞳を真っ直ぐソロンに向ける。
「そうだね、もしそれでもバレたら……」
「全てを賭けて、私が君を守るよ」
「……マーリ、」
「出来るだけね!」
「なるべくは逃げ切ろう!」
私も死にたくはないしね! と、マーリンはウインクをしておちゃらける。
(さっきまで真面目な雰囲気だったのに……変な男……)
どこまでも、本音が見えない男、でも、
「と、こんな言葉では不満かい?」
首を傾げソロンに笑みを向ける。
「いいえ、充分よ」
こんな言葉一つで、胸が軽くなるのは何故なのか。
「なら問題はない」
「ところで、ひとつ聞きたいことがあるんだけど……」
「何かしら?」
「君の今まで着てたドレスなんだけど……」
「なんでこんなに重くて硬いんだい?」
「……」
「なんで黙るのかな?」
「……コルセットよ」
「コルセットはドレスの下につけるだろう?一体化ではないよ?」
「それに時々カシャンって音するんだけど?」
「……最新式なのよ」
「聞いたことないよ!?」
「貴方が知らないだけよ、それは私が自分で処分するから放っておいて頂戴」
「そんな事より、さっさと荷造りしてしまいましょう」
それだけ言うとソロンは、プイッと顔を背け、買い込んだ食料や水をカバンに詰め込んでいく。
「えぇ……気になるなぁ」
何度かドレスを確認しようとしたマーリンだったが、ソロンの絶対零度のような冷たい視線には勝てず、諦めたのだった。
「さ、ようやく出発だよソロン」
支度を整えた二人は、田舎町【ココット】を出ようとしていた。
マーリンは目を閉じ、んーっと背伸びをし、体を伸ばす。
「全く、ここまで来るのに10話以上も使うなんて碌でもない作者だよ」
「マーリン貴方、何を言っているの?」
きょとんとした顔で、マーリンを見上げる。
「何でもないよ、いつもの私の戯言さ」
「そうね、間違いないわ」
「うん、そこは肯定より否定して欲しいなぁ」
流石に泣くよ?いつか泣くよ?
そんなマーリンを無視しソロンは進もうとする。
「あ、ソロン、待って」
「?」
マーリンの視線はソロンの靴を捉えている。
静かに目を閉じたマーリンはまるで、歌うように言葉を紡ぐ。
『黄金の竜の名の下、マーリンが命ず』
『石の小人、炎の蜥蜴よ、姿なき古き隣人よ』
『手を取り、踊る戯れの間、我らに祝福を授け賜え』
(リィン…)
鈴のような音がなると、ソロンの靴の周りが、パチッ、パチッと火花のように赤く煌めく。
数分の間、煌めき続け次第に光が小さく、消えていく。
「お待たせ、うん、上手くいったみたいだね」
「一体、何を?」
「ブーツの裏、靴底を見てごらん」
「靴底?……!」
買った時は確かに皮でできていた靴底、それが銀製の物に変わっていた。
「どういうこと?何をしたの?」
「変なことはしていないよ、ソロンが怪我をしないよう少しおまじないをしただけさ」
マーリンの説明によると、この靴には履いた者の身体を強化する効果、そして回復力を高める効果が付与されているらしい。
「履き心地もそんなに大差はないだろう?」
「えぇむしろ少し軽いくらいよ、これも魔術のひとつなの?」
「まぁ厳密に言うと違うけれど、大きなジャンルにくくってしまえば魔術と大差ないよ」
「……驚いたわ、そういう魔術もあるのね」
「魔術は多岐にわたるからね」
マーリンは得意気にそう語る
「……」
ソロンは不思議そうに靴を見つめている。
「さ、今度こそ、行こうか」
「…えぇ」
(魔術って本当に凄いわね)
(……私も彼から習えば……できるようになるかしら?)
そんなに思いがソロンの胸の中に、芽生え初めていた。
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