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悪女と嘘つき魔術師  作者: ミュウ
10/15

10.朝御飯と魔法操作

間が大分空いてしまいました!すいません!


『──…さま! お父さま!』

 ドアを開け、少女は迷うことなく、大好きな父のもとへ駆けていく

『あぁ、ソロンどうしたんだい?』

 ソファーに腰かけた父は嫌な顔をせず、駆け寄る娘を抱き止め、頭を撫でる。

『あのね! あのね……?』

 少女は、父の向かいの席に人がいることに気づく

姿が視界に入るまでそこに居るとは微塵も思わなかった。

『……お客様?』

『…あっ! ごめんなさい! 私ノックもご挨拶もしないで……』

幼いながらも少女は賢く、直ぐに自分の非に気付き、謝罪する。

『良いんだよ、ソロン』

『気配を消していたコイツが悪いんだから』

『それよりよく謝れたね、偉い偉い』

『彼は父さんの昔からの友人でね』

 父は向かいに座っている人物に目配せする。

その人物は丁寧にソロンの側に膝をつき目を合わせる。

『初めましてお嬢さん、私は──』


続きの声が聞こえない

顔を見ようとするが、なぜな不鮮明でぼやけてしまう。


あなた、だぁれ?



「……」

目を開けるとまず、うっすらとカーテンから射し込む光が目を刺す。

「……朝…?」

「……しっかり寝てしまったのね…」

 マーリンを待とうと思ってたのに

「……ん? いつベッドに入ったのかしら? 私」

 確かにソファーに座ったはず…と自分の記憶を辿るも座った後の事は思い出せない。

「変な夢をみたのは覚えてるのに……はぁ…ままならないわね」

 そういえば……夢のあの人は誰だったのかしら?

 結局、最後まで顔は見えなかったような?

「……あんなことあったかしら?」


「ソロン、起きたかい?」

 考え事をしているソロンの所へ、ひょっこりとマーリンが顔を出す

「ええ、今起きたわマーリン」

「おはよう、目覚めはいかがかな?」

「おかげさまで、悪くはないわ……もしかして貴方が運んでくれたの?」

「レディーをソファーに寝かしたままにはしておけないからね」

起こすのも気が引けたし

「あぁ、もちろん変なことはしてないからね?」

「…………わかってるわ、先に休んでしまって悪かったわね」

「沈黙が長かったなぁ」

「何?」

「何でもないよ」

 マーリンは慌てて笑顔を作る

「それよりお腹空いてないかい?」

「お腹……」

 そういえば、まともに食事をとってない。

 マーリンに、返事をするように腹の虫が弱々しく鳴いた。

「腹が減ってはなんとやら、と言うし……」

「食事にしようか!」


 テーブルには既に、サンドウィッチにスープが並べられていた。


「昨夜用意したものだけど魔法をかけていたからね、温かいよ」

「……」

 ソロンはどこか呆気にとられた顔でテーブルを眺めている

「ソロン?」

「……意外」

「え?」

「貴方…こんな繊細な魔法操作…できたのね」

「えぇっと、一応王室の魔術師だったんだけど?」

「……そうだったわね、あまり働いている所を見なかったから」

「僕のサボり癖は病気だからね」

 パチンッ、とウィンクを飛ばすマーリンのキラキラオーラを片手で払い、席に着きながら、ソロンは溜め息をつく

「威張って言うことじゃないでしょう?」

「そうだけど適度に力を抜くことがコツなんだよ」

「?」

「魔法操作というか魔力操作全般」

「私の経験則だけどね、力みっぱなしは何事にも良くない」

 パチンッとマーリンが指を鳴らす。

 するとふわふわとカップと昨夜ソロンが使ったポットが浮きあがる。

「…詠唱なしで……」

「この程度の魔法なら詠唱は要らないよ、砂糖は要るかい?」

「……2つ、お願い」

「了解」

 そのまま空中でカップにお茶を注ぎ角砂糖をいれる。

 コポポ…と気味の良い音を立てカップが満たされ、静かにソロンの前へ鎮座される。

「ソロンだって詠唱無しで使えるだろう?」

「ある程度の"攻撃魔法"であれば、ね……護身用に幼い頃から身に付けたから」

「でも……元々苦手なのよ繊細な力加減は」

「それは意外だね」

「……苦手分野くらい、私にもあるわ」

 どこか羨ましそうな、悔しそうな目でカップを見つめる。


「……教えようか?」

「え?」

 少しだけソロンの目が輝く

 マーリンは優しく微笑む。

「この分野に関しては、私はプロだからね」

「先生にするなら持ってこいだよ?」

「……そんな暇はないわ、こんな状況だし」

「こんな状況だからこそ手札は多いにこしたことはないよ?」

 マーリンは真っ直ぐにソロンの目を見つめる。

「……少し考えておくわ」

「うん、いつでも声をかけてくれて構わないよ」

「旅は短いようで長いから、ね?」

「さぁ、食事にしよう」


 マーリンの魔法のお陰もあるが、並べられたサンドウィッチも、スープも、とても美味しかった。

 サンドウィッチはパンがほのかに甘く、レタスがシャキシャキとしていて、炙られたベーコンと良く合う。

 スープは野菜がとろとろに溶けており、温かさが空腹に染みた。

 

 ほんの少し表情が綻んだソロンを茶化すことなく、マーリンはお茶を飲みながら眺めていた。



閲覧ありがとうございます。

諸事情により不定期更新です。ご了承下さい。

お暇な時にでも評価、ブクマ等いただけたら嬉しく思います。

よろしくお願いします。

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