1.一縷の望み
『ソロン=ディア=アーベントティンメルング』
『貴公を──』
『国外追放の刑に処す──』
そして私は国を追われた。
国を追い出され、人里離れたと言う言葉がよくにあうそんな場所に建った、古びた洋館
ほんの少しの使用人、死なない程度の環境
豪華絢爛な生活とは一変
地位も名誉も、野心も野望も、何も無くなった。
あの娘さえいなければ……
私はきっと……
「……幸せになれたのかしらね?」
たった一人暗い部屋で呟く
「おや? 君でもそんなことを言うのだね?」
「けど相変わらずの鉄面皮だ」
「……何しに来たの? マーリン」
ジロリと鋭い眼光で射抜くのは王室仕えの魔術師、マーリン
甘いマスクを武器に何人の女を虜にしてきたのか
色々と謎の多い男だ。
「私を嗤いにでも来たの? 暇な男ね」
「退屈と言うところだけは認めるよにしても……」
「勿体無いな」
「はぁ?」
「絹の様に白い肌、月の光の様な髪、そして紫玉の瞳」
「笑えばもっと美しいだろうに」
そう言いマーリンはソロンに触れる。
バチンッ
ソロンはマーリンの手を払いのける
「ふざけないで」
こんな襤褸を纏った私が美しい?
使用人は影で笑い、何も持たぬ私が?
……屈辱でしかない
「所詮貴方もあの娘の味方でょう!?」
あの無垢で眩しい花のような娘の
歯を食い縛り激情をマーリンに向ける
「ここに一人で来たならば殺される覚悟があるのでしょうね‼」
ソロンは魔力で編んだ刃をマーリンに振りかざす
だが……
パリンッ
その刃は意図も容易く砕かれる
「……は…流石は王室…魔術師」
格が違う
ソロンは諦めたように椅子に座る
「また罪状が増えたわね」
「え? なんのことだい?」
「は?」
マーリンは首をかしげる
「今の事なら気にすることはないよ」
私が煽ったせいだから、と
それに、
「私は王室を辞めてきたんだ」
「………王室を辞めた……?」
「うん」
ニッコリと笑うマーリン
ソロンは深呼吸をする
「馬鹿なの?! 貴方は?!!!!」
王室を辞めた? あり得ない
「出世する気は無いの?!!!! それでも男なの?!!!!!」
マーリンは降参と言わんばかりに両手を上にあげソロンの怒号を聞いている。
「そんな羨ま腹立たしい地位にいると言うのに、それを捨てた⁉馬鹿にもほどがあるわ!!」
息を切らせたのかゼェゼェと肩で息をし漸くソロンの説教(という攻撃)は止まった。
凄い、声量で窓ガラスにヒビが入っている。アニメみたい。
「まぁまぁ落ち着いてMajesty」
女の子が青筋は良くないよ?
「うるさいウザイ…意味わかんない…」
意味解らないといえば…
「貴方…何しに来たの?」
本当に
彼は待ってましたと言わんばかりにその口元を三日月の様にし、笑う
そして、蠱惑的な声で話始める
「取引をしようよソロン」
「取引?」
「そう取引」
「率直に言うがこのままでは君には未来はない」
国を追われ、王、妃、そして騎士達を敵に回した。
この屋敷の中ですら君の味方はいない
「……わかってるわそんな事」
言われなくても……
「このままでは伸し上がることすらできないし君は殺されるかもしれないよ?」
君の悪事を知らぬものはいないから
「そこで、だ」
「イイ話がある」
マーリンが語ったのはこの場所からずっと西にある大陸
そこはどんな者でも受け入れられるほど力の強い国がある
その国で新王の花嫁を選ぶ舞踏会が行われる
花嫁に立候補出来るのは姫や貴族だけでなく農民等様々な女に権利がある
花嫁の条件は《強く》《美しい》こと
「つまり私にその舞踏会にでろ、と言うわけかしら?」
「ご名答。どうだい? 悪い話じゃないだろう?」
「君なら選ばれる可能性は高いし最悪地位なら手にはいるかもしれないよ」
「信憑性と貴方の目的は?」
「私はその国の出身ということ」
愛国心から
「君なら素晴らしい遺伝子持ってそうだし」
私が持つ理由はこれくらいしかない
「でも…」
「君にはこれが最後のチャンスだよ?ソロン=ディア=アーベントティンメルング」
「君の望み……ここで絶えさせる?」
「………」
翌日、マーリンとソロンは列車に揺られていた。
あの後、最低限の準備を済ませソロンとマーリンは使用人からまんまと隠れ屋敷を抜け出した。
「まさか君がイエスと言うとはね」
「言わせたのは貴方でしょう? と言うか話し掛けないで殴りたくなるから」
フン、と顔をマーリンから背け窓の外を眺める
見たことのない街、見たことのない風景
「……」
「檻の外は気分がいいかい?」
「は?」
マーリンはニコニコ笑ったまま答えない
「……」
余計なことを考えるのは止めよう
無駄なことだから
楽しいなんて…
思ってはいけない。
そういえば、重要なことを聞いていない。
「ねぇその西の国とやらは何て言う名前の国なの?」
幾つかは知識として覚えてはいるけれど、果たしてどれなのか?
「ん? あぁ言ってなかったね」
「"ノアルーナ大国"だよ」
「……は?」
嘘でしょう?
ソロンは今まで以上に顔を歪ませる
「貴方っ! 私を"騙した"の!?」
ノアルーナ大国
最果ての国、新月の加護を宿す聖なる国
人だけではなく異種族、幻獣と共存する夢の国
誰もが知っている、"お伽噺"の国
「この大嘘つき!!」
あぁ…そもそもこんなのを信じた自分も馬鹿だった…と後悔する。
「こらこらちゃんと話を聞こうよ」
マーリンは苦笑し説明を始める。
「ノアルーナ大国って言うのはある国の昔の名前だよ」
「昔……?」
「そう、で、今その国はこう呼ばれている──」
「──キャシャラト大国」
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