番外編 私の思い
多分、私は、彼のことが好きだったんだと思う。私以外誰もいない将棋部に来てくれた彼を。詩音ちゃんを救ってくれた彼を。そして、私を救ってくれた彼を。
でも、私は、彼に自分の思いを伝えなかった。だって、彼には詩音ちゃんがいるんだから。
彼は、詩音ちゃんのことが大好きなのだ。師匠としての好きではなく、一人の女性としての好き。それは、私の目から見ても明らかだった。まあ、彼は鈍感すぎて、自分の思いに気が付いていないようだったが……。
私は、先輩として、二人の邪魔はできない。大好きな彼と、大好きな詩音ちゃん。二人が結ばれるのが、一番いい。
そう、思っていたのに……。
「大学、県外にするんじゃなかったな~」
そんな言葉が、一人暮らし用、六畳一間の部屋に響く。どうにも私の中の未練は断ち切れていないらしい。
ピコン!
突然、傍に置いてあったスマートフォンから、かわいらしい音が聞こえた。ラインのメッセージが届いたのだ。
「……え!?」
画面を見ると、彼の名前が表示されていた。急いでラインのアプリを開き、メッセージを確認する。
『先輩、今、電話しても大丈夫ですか? 将棋部のことで相談がしたいのですが……』
本当にもう、彼という人は……。
「タイミングよすぎだよ~……」
私は、一度深呼吸をし、彼に電話を掛ける。きっと今、私の顔は、人には見せられないほどにやけているに違いない。
「もしもし。元気~?」




