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とある師弟の帰り道  作者: takemot
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第48.5話 師匠と先輩の隠し事⑩

「先輩、一つだけ相談があるんですけどいいですか?」


 入学式の日から数か月後。突然、詩音ちゃんが私に相談を持ち掛けてきた。


「いいよ~。どうしたの~?」


「実は、彼のことで……」


「彼って、詩音ちゃんの弟子君のこと~?」


「はい……」


 詩音ちゃんの話では、弟子君は、詩音ちゃんと同じ高校に入学しようと頑張っているらしい。これまでからっきしだった勉強に、死の物狂いで取り組んでいるんだとか。


「へ~。それだけ詩音ちゃんのこと、大切に思ってるんだね~」


「……からかわないでください」


 そう言いながらうつむく詩音ちゃんの顔は、少し赤みがかっていた。


「それで、何か問題でもあるの~?」


 先ほど、詩音ちゃんは、私に「相談がある」と言っていた。もしかして、弟子君がこの高校に入学することに関して、不都合でもあるのだろうか……。


 私の言葉に、詩音ちゃんは顔を上げ、私をじっと見つめた。とても真剣な眼差しだった。


「……もし、彼がこの高校に入学したら、十中八九、将棋部に入部すると思うんです」


「……だろうね~。詩音ちゃんの話を聞いてるだけでも、弟子君が将棋大好きな人だって分かるからね~」


「はい。それで、先輩が彼と会った時……昔のこと、言わないでほしいんです」


 詩音ちゃんの声は、ほんの少しだけ震えていた。


 私は、詩音ちゃんが何を思っているのか、すぐに理解した。詩音ちゃんは、怖がっているのだ。自分の大切な弟子に、自分の過去を知られてしまうことを。


 誰だって、自分の弱いところは他人に見せたくないものだ。それが、大切な人ならなおさら。それを知られてしまっては、その人との関係が粉々に砕けてしまうかもしれないから。


「そっか~。分かったよ~」


「すいません」


「……じゃあさ、念のため、私たちが知り合いだってことも、隠した方がいいよね~」


 私と詩音ちゃんの関係を知れば、弟子君は、私に詩音ちゃんの過去のことを聞いてくるかもしれない。私自身、ごまかすことが不得意なわけではないが、思わず漏らしてしまう可能性もある。念には念を入れなければならない。


 詩音ちゃんのためにできることはなんだってやりたい。それが、今の私にできる、詩音ちゃんに対しての罪滅ぼしだ。


 私の提案に、釈然としない表情を浮かべる詩音ちゃん。自分の過去だけでなく、私との関係をごまかすことに、疑問を持っているようだった。しかし、しばらくの沈黙の後、ゆっくりと首を縦に振った。


 この会話の数か月後、詩音ちゃんの弟子君、つまり、後輩ちゃんが、私たちの高校に入学した。私たちは、約束通り、後輩ちゃんにすべてを隠し続けた。







 これが、後輩ちゃんの知らなかった、私と詩音ちゃんの秘密。

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