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とある師弟の帰り道  作者: takemot
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第48.5話 師匠と先輩の隠し事⑥

「……でも、怖いんです。今の彼との関係が、悪い方に転がっていくんじゃないかって」


 師匠の恐怖がどれほど大きいものなのか、僕には想像がつかない。いや、そもそも想像するだけ無駄なことなのかもしれない。だから、今、僕にできることは一つ。僕の思いを、師匠に伝えることだけだった。


 僕は、ゆっくりと師匠に近づき、その隣に腰を下ろした。


「師匠……」


「……何?」


 僕の方に顔を向ける師匠。二つの視線が交わる。


「僕、師匠の過去に何があったのか、全然知りません。正直、知らなくてもいいかなとも考えてます。でも……」


 先輩の挑発によって明らかになった師匠の本音。それに対して、取り繕った言葉を言うだけならいくらでもできる。だが、絶対に、そんなことはしたくなかった。


「僕は、師匠が苦しむ姿だけは見たくありません」


「…………」


「師匠が、自分の過去を隠し続けて苦しむくらいなら……」


「…………」


「どうにかしてその苦しみをなくしたいって、思います」


「…………」


「だから……」


 師匠が頷いたのは、それから数分後のことだった。







 僕たちは、先輩の家へ場所を移した。冬の夜に、コミュニティーセンターの裏手で話を続けることは、さすがに難しかったからだ。先輩のご両親は、突然来た僕たちのことをだいぶ訝しんでいたが、先輩が何とか説得してくれた。


「お茶持って来たよ~。……後輩ちゃん、あんまり部屋の中をキョロキョロ見られると恥ずかしいな~」


「す、すいません。つい……」


 初めて入った先輩の部屋。中はかなり広い。壁沿いに、ベッドや勉強机、本棚、クローゼットなどが並んでいる。部屋の中央には、大きな絨毯とこたつテーブル。こたつテーブルの端には、折り畳み式将棋盤と駒袋が置かれている。部屋の中で最も目立つ絨毯がピンク色のせいなのか、いかにも女の子の部屋といった印象だ。いや、それとも、甘々なタイトルの恋愛小説が、本棚からあふれ出し、床にまで置かれているせいだろうか。


「さて、後輩ちゃんは、自分の家に連絡できた~?」


 こたつテーブルの対面に座る先輩が、僕にそう尋ねた。


「はい。『先輩の家に行くから遅くなる』って電話しました」


「詩音ちゃんは~?」


「……できました」


 先輩の質問に、僕の右斜め前に座る師匠がゆっくりと頷く。


「オッケ~。じゃあ、説明を始めようか~。後輩ちゃん、いろいろ質問したいことはあるだろうけど、私が全部話し終わってからにしてね~」


「はい」


「師匠ちゃん、説明は私がするから、何か間違いがあったら言ってね~」


「……分かりました」


 先輩が語ったのは、僕の全く知らない物語。師匠と先輩のこれまでの発言や行動が、一つの線で結ばれる物語。

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