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とある師弟の帰り道  作者: takemot
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第48.5話 師匠と先輩の隠し事②

 土曜日。師匠との帰り道。コミュニティーセンターから駅までの道のり。 


「師匠、明日は何する予定なんですか?」

「そうだね……。勉強した後、将棋の棋譜並べでもしようかなと思ってるよ」


 たわいもない会話をしながら、ゆっくりとした速度で歩く。そう、そんないつもと同じような光景。何も変わることのない、幸せな瞬間。


 だが、それは、突然に崩れ去った。


「……あ」


 駅の出入り口正面に着いた頃。何かに気が付いたような師匠の呟き。


 一体どうしたのだろうと、僕は、首を傾げながら、師匠の方に顔を向ける。


 師匠は、ピタリと動きを止め、ただ一点を見つめていた。


 師匠の視線の先。駅構内。そこにいたのは、三人組の男の子たち。身長的に、三人とも中学生くらいだろうか。三人は、仲良く冗談を言いながら笑い合っていた。だが、そのうちの一人が、スッとこちらに顔を向けた時、その目が大きく見開かれた。残りの二人も、異変を察知したようで、こちらに顔を向ける。そして、同様に、目を見開く。


 固まって動かない師匠と男の子たち。僕は、何が何だかわからず、ただオロオロするばかりだった。


「お、おい、向こうから行こうぜ」


 男の子の一人がそう告げ、くるりと背を向ける。そのまま、反対側の出入り口に向かっていく。それにつられるように、二人の男の子は、「おう」、「そうだな」と返事をしながら、その子の後ろについていった。


「えっと。さっきの、一体何なん……師匠?」


 今、何が起こっていたのか、師匠に尋ねようとした時だった。


 初めて気が付く。師匠の体が、ブルブルと震えていることに。師匠の顔に、恐怖と苦痛の感情が浮かんでいることに。


「…………なさい」


「え?」


「……ごめん、なさい」





「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…………」





 同じ言葉を何度も何度も繰り返しながら、師匠はその場にうずくまった。両手で頭を抱え、今にも消え入りそうな様子だった。


 駅の出入り口を通る人、その全てが、ギョッとした顔でこちらを見る。そして、自分は何も関係ないですよとでも言うかのように、足早に僕たちの横を通り過ぎていく。


「師匠、どうしたんですか!?」


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…………」


「師匠! 師匠!!」


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…………」


 僕の叫びに、師匠は全く応じてくれない。ただ同じ言葉を繰り返すだけ。


 何とかしなければ。その思いが、僕の中でどんどん強くなっていった。


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