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とある師弟の帰り道  作者: takemot
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第37話 それにしても……告白……ね

 師匠との帰り道。学校から駅までの道のり。


「……師匠、今日、様子変じゃないですか?」


 歩きながら、チラチラと僕の方に視線を向ける師匠。そもそも、学校の東門で会った時にも、「え、えっと……か、帰ろうか」といつもとは違う反応を見せていた。


「…………実は、君に相談したいことがあってね」


「師匠がそんなこと言うなんて珍しいですね。何ですか?」


 師匠が僕に何かを相談するなんて滅多にない。基本的に、師匠は、何でも自分でそつなくこなしてしまうからだ。そんな師匠からの相談。これは、気合いを入れなければ。


 僕の肩に、自然と力が入る。


 師匠は、僕に向かって、ゆっくりと言葉を紡ぎ出した。


「今日ね…………告白、されたの。クラスメイトの男の子に」


 ……ん?


 ……んん?


 ……んんん?


 僕の足は驚きでピクリとも動かなくなった。師匠もつられて足を止める。


「こ、ここここ告白……ですか?」


「……うん」


「こ、告発とかではなく?」


「何言ってるの? 告発じゃなくて告白。『あなたと付き合いたい』っていう」


 師匠が告白された。それは、僕にとって衝撃以外の何物でもなかった。恋愛というものがよく分かっていない僕だが、今、自分がとてつもない状況に置かれているということは何となく理解していた。


 まあ、師匠が告白されるのは致し方ないことだといえる。師匠は、大人びていてとても綺麗な人だし、性格だっていい。成績も常に上位。スポーツも、元陸上部ということもあって人並み以上にできる。そして何より、師匠と指す将棋は楽しい! ……いや、最後のは限定的過ぎるか。とにかく、師匠はモテる要素を多く持っている。だからこそ、今回、告白されたのだろう。ま、まあ、師匠がモテるのは、弟子としても大変誇らしいというか、嬉し……くはない。あれ? なんで? 


「……え……ねえ……ねえってば」


「……へ?」


「君、ボーっとしすぎ」


 目の前には、じっと僕の顔を覗き込む師匠の姿があった。花のような良い香りが鼻腔をくすぐる。


「あ、ご、ごめんなさい」


 そう言って、僕は、ペコリと頭を下げた。


「……じゃあ、話の続きね。告白されて、それ自体は断ったんだけど、明日から彼にどう接すればいいのか……」


「……え!?」


「……どうしたの?」


「告白、断ったんですか?」


「うん。『あなたのことあまり知らないから付き合うのは無理です』って。……もしかして、断らない方がよかった?」


 師匠の言葉に、僕は、勢いよく首を振った。首が取れるのではないかと思うほど。


 師匠の表情は少しだけ不安そうだったが、僕の反応を見ると、いつものような穏やかな表情に戻った。


 結局、師匠の相談は、告白を断った人に明日からどう接していけばいいのかというものだった。僕が、「これまで通り、普通に接すればいいのでは?」と答えると、師匠は「そうなんだけどね……」と言って、黙り込んでしまった。どうやら、まだ少し悩んでいるようだ。


 僕たちは、再び駅に向かって歩き始める。いつも通りのゆっくりとした速度。辺りは少しだけ薄暗い。ライトを点けている車の数が、これまでよりも多くなった気がする。


「まあ、なるようになるかな。それにしても……告白……ね」


 不意に、師匠の言葉が耳に入ってきた。思わず、視線を師匠の方に向ける。師匠もこちらを見ていたようだ。二つの視線が交差する。


「師匠、どうかしましたか?」


「……別に」


 師匠が今何を考えているのか、僕には全く分からなかった。


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