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とある師弟の帰り道  作者: takemot
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第30.5話 僕の先輩⑥

 部活動の時間はあっという間に過ぎていった。学校で定められている完全下校時間が刻一刻と迫る。


「先輩、今日はありがとうございました」


「こっちこそありがとね~。楽しかったよ~」


「僕も、楽しかったです」


 そう言って、僕は、入口の所で先輩に向かってお辞儀をした。そのまま、扉を閉めるためにドアノブに手を伸ばす。


「後輩ちゃん」


 突然の、先輩からの呼びかけ。つられるように、視線を先輩に向ける。僕の目に映ったのは、どことなく不安げな表情を浮かべる先輩だった。


「何ですか?」


「……明日も、来てくれるかな~?」


「……? 入部した次の日に休むわけないじゃないですか」


 僕は、幽霊部員になりたくてここに来たわけではない。将棋部に入部し、将棋を指す。そのためにここに来たのだ。師匠がいないのは残念だが……。


 僕の言葉に、先輩の表情が晴れやかになっていくのが分かった。


「そっか~。ごめんね~、変なこと聞いて~」


「いえ。じゃあ、また明日、よろしくお願いします」


「うん。また明日~」


 手を振る先輩にもう一度お辞儀をし、僕は扉を閉めた。


 部室棟の階段をゆっくりと降り、一階へ。相変わらずお化け屋敷のような雰囲気。だが、この雰囲気にもいつかは慣れることだろう。


 部室棟を出て右。学校の東門。師匠が、本に視線を落としながら僕を待っていた。


「師匠、お待たせしました」


 僕が声をかけると、師匠は、本から顔を上げた。いつものような穏やかな表情で僕を見つめる。


「初めての部活、どうだった?」


「すごく、楽しかったです! 先輩とたくさん将棋が指せました」


「そっか。よかった」


「本当に楽しくて、楽しくて。……というわけで、師匠!」


「……入らないよ、将棋部」


 即座に僕の言いたいことを察し、拒否する師匠。


「……やっぱり、駄目ですか?」


「うん」


「……うう」


 僕は、がっくりと肩を落とした。


 師匠とそんなやり取りをしていると、突然、「お~い」と大きな声が聞こえてきた。声のした方を見る。部室棟の三階。窓から身を乗り出すようにして、先輩がこちらに向かって手を振っているのが見えた。


「先輩!?」


「お~い。またね~。後輩ちゃ~ん、しお……師匠ちゃ~ん」


「えっと……さ、さようならー」


 そう言いながら、先輩に手を振り返す。少し恥ずかしいが、ここは合わせておくべきだろう。


 チラリと師匠の方を見る。師匠は、ペコリと一度頭を下げただけで、後はただ黙って先輩を見上げていた。


「……私のこと、何か話したの?」


 先輩が窓の向こうに消えてしまった後、師匠は静かにそう尋ねた。


「まあ、一応。あ、でも、そんなに変なことは言ってない……と思います」


「……そう」


 師匠の放った一言。その裏に一体どんな考えがあるのか。僕には全く分からなかった。

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