第28話 頑張ります。ハハハ
夏休み。師匠との帰り道。コミュニティーセンターから駅までの道のり。
「ふふふ。師匠、僕はついにやりましたよ」
「……急にどうしたの?」
笑みを隠すことができない僕を、師匠は、怪訝な様子で見つめる。
僕は、ついにやってしまったのだ。大いなる偉業を。ふふふふふふ。
「実はですね……」
「もしかして、夏休みの宿題がやっと終わった……とか?」
…………
…………
「……図星なんだね」
ハアと溜息をもらす師匠。
……どうして分かるんだろう。
「もうすぐ、夏休み終わるのになあ」
「う……」
「夏休みの宿題、七月中に終わらせなさいって言ったのになあ」
「うう……」
「夏休み明け、すぐにテストがあるのになあ」
「ううう……」
師匠の言葉一つ一つが、僕の心にブスブスと突き刺さる。僕は、何も言い返すことができず、唸るしかなかった。
「……ごめん、ちょっと意地悪しちゃった」
そう言って、師匠は、いたずらっ子のような笑みを浮かべた。その笑みは、夕日に照らされてキラキラと輝いて見えた。
僕の心臓がドキリと大きく跳ねる。師匠のその表情は、心臓に悪すぎる。
「い、いえ。師匠の言ってることは、間違ってないので……」
師匠から顔をそらし、歩き続ける。先ほどと比べ、自分の顔の温度が上がっているのが分かった。
ゆっくりと駅までの道のりを歩く僕と師匠。夏休みがもうすぐ終わってしまうというのに、僕たちには相変わらず変化らしい変化がない。おそらく、夏休みが明けた後も、僕たちはずっと同じようなことを繰り返していくのだろう。学校の東門で待ち合わせをして。一緒に駅までの道のりを歩いて。駅でお互いにお別れを言って。それを繰り返した先に、一体何があるのか、それとも何もないのか。今の僕には、全く分からなかった。
「……そういえば、社会のレポートの題材は何にしたの?」
駅近くの横断歩道を渡った辺りで、突然、師匠の口から聞きなれない単語が飛び出した。
「……社会のレポート……ですか?」
師匠はいったい何を言っているのだろうか。社会のレポートなんて……レポートなんて……。
「毎年、全学年の宿題になってるはずなんだけど……。今年の一年生には出てないの?」
「…………あ」
…………ああああああああああ。忘れてたああああああああああ。
「……もしかして、忘れてた?」
「うううう……」
僕は、頭を抱えた。足にはほとんど力が入っておらず、今にも崩れ落ちそうだった。
「えっと……うん、が、頑張ってね」
師匠が、両手の拳を握り、僕にエールを送る。だが、その表情には、明らかな呆れが見て取れた。
「頑張ります。ハハハ。…………ハア」
力の入らない足でフラフラと歩きながら、僕は弱々しく答えるの




