第27.5話 先輩! また部室で!
大会終わり。会場からの帰り道。先輩と二人で帰宅中。
「先輩、お疲れさまでした」
「……後輩ちゃんもお疲れ~」
いつものような、先輩ののほほんとした声。だが、その表情はどこか悔しそう。まあ、当たり前だ。先輩は、全国大会出場一歩手前で負けてしまったのだから。
ちなみに、僕の結果はというと…………うん。来年も頑張ろう。
スタスタと無言で歩き続ける。先輩の押す自転車のタイヤが、チャリチャリと絶え間なくその音を響かせる。
先輩に、何か声をかけるべきなのだろうか。でも……。
「私の家こっちだから、ここでお別れだね~」
僕が悶々としている間に、いつの間にか学校の近くに来てしまっていた。先輩とは、ここで別れることになる。先輩は、先ほどまで押していた自転車にまたがり、ペダルに足をかけていた。
迷っている暇はなさそうだった。
「あ、あの、先輩」
「……何かな~?」
「えっと……僕、来年頑張ります。先輩の分まで頑張って、全国に行きます……だから……その…………」
言葉が続かない。この後にどんなことを言えば先輩が元気を取り戻してくれるのか、まだはっきり分からなかったから。
僕の言葉に、先輩は目を丸くしていた。そのまま、少しうつむいたかと思うと、肩をプルプルと震わせ始めた。そして……
「アハハハハハ」
先輩は、盛大に笑い出した。
「え? え? え?」
何が起こっているのかよく分からない。こんなに笑っている先輩は、今まで見たことがなかった。
「ご、ごめ、そ、そんなこと言われるなんて、思ってなくて~。アハハハハ」
周囲に先輩の笑い声が響き渡る。僕たちの横を通る人たちが、何事かとこちらに顔を向ける。
先輩が落ち着いた頃、僕の頭の中は?マークで埋め尽くされていた。
「ふ~。久々にこんなに笑ったよ~」
「……そんなに面白かったですか?」
「違うよ~。そういうのじゃなくてね~。君は、いつもいつも優しすぎるなって思ってさ~」
ニコニコと笑みを浮かべながらそんなことを口にする先輩。そういえば、以前、師匠にも同じようなことを言われた気がする。
「あの、せんぱ」「後輩ちゃん」
僕の言葉を遮り、先輩は、クルリと僕に背を向けた。まるで、自分の顔を隠すかのように。
「ありがとね~。…………本当に、いろいろ」
そう言い残し、先輩はペダルをこぎ出す。
僕のどこを優しいと言っているのか、いろいろとは何なのか。聞きたいことはたくさんある。だが、少しずつ離れていく先輩に、それをすべて聞くことはできない。だからこそ、一言だけ。
「先輩! また部室で!」




