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とある師弟の帰り道  作者: takemot
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第23話 まあ、何となく、ですかね

 師匠との帰り道。学校から駅までの道のり。


「今日、夢の中に師匠が出てきたんですよ」


 僕の言葉に、フムフムと頷く師匠。いかにも興味津々といった様子だ。


「それでですね、一緒に帰ってるのはいつも通りなんですけど、師匠が、『ちょっと寄り道していこうか』って珍しいこと言ってたんですよね」


 これまで、何度も駅までの道のりを一緒に歩いてきた僕たちだが、寄り道をしたことなど一度もない。せいぜい、師匠が駅の中に入る前に、駅近くのベンチに座って話をするといったことがあるくらいだ。だからこそ、夢から覚めた後も、夢の中の師匠が言ったその言葉は、僕の脳裏に焼き付いていた。


「……結局、どこに寄り道したの?」


「いや、丁度そこで目が覚めちゃったので、どこに行ったかまでは……」


「……そっか」


 そう言って、師匠は、少しだけ考える仕草をする。そして、数秒後、ニコリと微笑んで思いがけない言葉を口にした。


「ねえ、ちょっと寄り道していこうか」


「え!?」


 驚く僕をよそに、師匠は、普段まっすぐ通っている道を右に曲がった。


「し、師匠、待ってください」


 僕は、急いで師匠の隣に並ぶ。


 師匠は、横目でチラリと僕の方を見た後、何事もなかったかのように歩みを進めた。


 とても静かな道。いつも聞いている大通りを走る車の音が、とても遠くに感じられる。道の側面には、小さなアパートや一軒家がいくつも立ち並んでおり、そこかしこから明かりが漏れている。不意に、「ワハハ」という笑い声。声からして、テレビ番組だろう。それにつられるように、「キャンキャン」という犬の鳴き声が聞こえてきた。


「……こっちの方って、こんな感じだったんですね」


 とても曖昧な感想。何と表現すればいいのか分からなかったのだ。


「……生活感があるっていうのかな。こういう雰囲気も、いつもと違っていいね」


 いつものような穏やかな表情を浮かべる師匠。心なしか、その声は少し弾んでいるように感じられた。


「……僕には、あんまり分からないです」


 少なくとも、不快な雰囲気ではないというのは分かるが、いいとまでは思えない。師匠がこの雰囲気のどこに魅力を感じているのか、僕には全く分からなかった。


「まあ、考え方や感じ方は人それぞれだしね。……そろそろ戻ろうか」


「……はい」


 僕たちは、クルリと踵を返し、元来た方向へと歩みを進める。先ほどまで見ていた景色が、ゆっくりと逆方向に流れていく。


「……やっぱり、僕は、いつもの道が一番好きかもです」


「……どうして?」


「えっと……よく分からないんですけど……まあ、何となく、ですかね」


 また曖昧なことを口にしてしまう僕。そんな僕を見て、師匠は「そっか」と言いながら微笑むのだった。


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