表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある師弟の帰り道  作者: takemot
19/94

第14話 ち、違いますよ!

 師匠との帰り道。学校から駅までの道のり。


「今日、学食で君の姿を見かけたんだけど……」


「ゴホッ! ゴホッ! ゲホッ!」


 師匠の言葉に、つい咳き込んでしまう僕。


「……大丈夫?」


「だ、だいじょうびゅです。はい」


「……大丈夫じゃなさそうだね」


 呆れたような、心配そうな、どことなく不安そうな。そんな、微妙な表情で、師匠は、混乱する僕の顔を覗き込む。


 僕は、鞄からペットボトルを取り出し、中に入っているお茶を一気に飲み干した。冷たいお茶が、乾いた喉を潤す。だが、混乱した頭が元に戻ることはなかった。


「それでさ……一緒に居た子……なんだけど……彼女……だったり……?」


「ち、違いますよ! 授業で一緒に課題をやることになって。あ、あれです。一年生の社会でやるレポートです。それで、それで、どんなテーマでやろっかって相談することになって。すぐにテーマを決めたくて。ご飯を食べながらってことになって。えっと、だから、別にやましいことをしてたんじゃなくて。あの……」


「わ、分かったから。そんなに慌てなくても……」


 僕のことを手で制する師匠。その表情は、少しだけ安心したものに変わっていた。


 おそらく、今の僕のつたない説明で、師匠は全てを理解してくれたのだろう。だが、どうしてだろうか。僕の頭の中は、もっとちゃんと説明をしなければという考えに支配されていた。


「あのですね。別に、師匠に隠し事とか、そんなことしてたんじゃないですからね。あの子はただのクラスメイトで、彼女とかじゃないです。違います。違いますから! あと……」


「だ、大丈夫。分かった。分かったから落ち着いて!」


 師匠は、僕の正面に立ち、両手で僕の肩をぎゅっと掴んだ。肩に少しの痛みが走る。


「あ……すいません。つい……取り乱しました」


 師匠に掴まれたことで、僕の頭が急速に冷えていく。よくよく考えてみると、あまりにも取り乱しすぎだ。僕は、深呼吸を一度行い、ゆっくりと師匠に頭を下げた。


 そんな僕の様子を見て、もう大丈夫だと思ったのだろう。師匠は、僕の肩から手を離した。


 気まずい雰囲気が、僕たちの間に漂っていた。


 少しの沈黙の後、師匠はゆっくりと口を開いた。


「えっと……変なこと聞いてごめんね」


「……いえ」


「……そろそろ行こっか」


「……はい」


 僕たちは、再び歩き出す。気まずい雰囲気を漂わせながら。


 それにしても…………だ。自分で、自分の気持ちがよく分からない。


 師匠に、クラスメイトを彼女だと勘違いされたことで、こんなに取り乱してしまうなんて…………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ