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プラネットルナ  作者: 千代鶴
第一章 初土俵
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7 初めての仲間

いよいよ、本編のメインヒロイン、エルフェアーのリリエンヌ嬢が本格的に登場します!


「ささ、この上にどうぞ」

 俺は襲われていたエルフェアー族だったかな?の女の子、リリエンヌ嬢を丑三つの背中に乗せる。明け荷+力士の身体では完全に過積載、俺の乗れるスペースなどないのだが、小さく細い身体のエルフェアーの女の子ともなると話しは別。余裕のよっちゃんで乗せることができるのだ。

「ありがとうございます。何から何までお世話になりっぱなしで」

「気にすることはないですよ。今後、短い時間とはいえ、俺の方が多分お世話になることがあると思うので」

 記憶喪失の俺は、この世界のことは本当に何も知らない。だから、これから袂を分かれる時まで、彼女に色々と教えてもらおうと思うのだ。助けてあげたお礼にと言ったら恩着せがましいけど、少しぐらい教えて君になっても許されるよね?

「あなたのような立派な力士が、わたしリリエンヌの世話になるですって!多分、わたしリリエンヌがあなたの役に立てることなどないと思いますけど」

「そんなことはないですよ。俺、実は記憶喪失でこの世界のこと何も知らないから、教えられる範囲で教えて欲しいんです」

「ええええ!記憶喪失ですって!」

 なんだか盛大に驚かれてしまった。やっぱ、記憶を失った者などこの世界ではかなり異質な存在なのだろう。そもそも俺が来るまでは存在していなかったのかも知れない。聖母様が言っていたとおり、俺はこの世界ではかなりの異端者。もう少し慎重に言うべきだったな、と今更ながら反省する。もう遅いけどな。


 俺とリリエンヌ嬢を乗せた丑三つは、ロナウド街道の歩道を歩いている。本来、乗用動物に人が乗っている状態だと車道を走行しなければならないのだが、彼女は乗ってはいてもオペレートはしていないし、何より俺がすぐとなりで丑三つの手綱を握っているので、特例として歩道を歩くことが許されているのだ。言うまでもなく、ルナカツ石板による情報だ。石板だけでは全てのことを知ることは不可能なので、彼女に色々と教えてもらいたいことがたくさんあるんだけども……。

「先ほどはごめんなさい。力士の方がパーティーを組まず単独で歩いているのも変だな、と失礼ながら思っていたところに記憶喪失ときたものだから、ものすごく驚いてしまって」

「なるほど。力士っていうのは、通常だとパーティーを組むものなんですか」

「ええ。力士といったら一番のチート職業ですからね。パーティーにひとりでもいてくれたら大変心強いし、なんといっても力士はお相撲さんとも言われてプラネットルナ中で人気のある職業。あまり感心できることではないけど、その力士、お相撲さんと同じパーティーでプラネットルナ中を旅している、冒険しているともなると鼻が高いし、箔もつくってものでしょう?だから、ほとんどの冒険者は力士をパーティーに入れたがり、力士のいるパーティーに加入したがるものなんですよ」

「なるほど。力士は実力人気面ともに高いから、ほとんどの冒険者や旅人は一緒に旅したいと思うんですね」

「ええ。ヒトという種族はもちろん、わたしリリエンヌみたいなエルフェアーや、力自慢で知られるドワーフルのような妖人なんかも、みんな力士のいるパーティーに憧れています。というわけで、……その、もしもよろしかったら、しばらくわたしリリエンヌと一緒に旅をして頂けませんか?今まで一緒に旅をしていたパーティーのメンバーが、いきなり全員サテライトアースへ用事で帰還してしまい、しばらくこちらの世界へ戻ってこれないので話し合いの結果、解散ということになってしまって、非力なエルフェアーの女の子ひとりでどう旅を続けようか迷っていたところでしたの。あなたのような大人でしかも力士が一緒なら百人力も同然です。我が儘なお願いだとは分かっていますが、イヤですか?」

 大きな瞳をウルウルさせて見つめてくるリリエンヌ嬢。これはもうYesという選択肢しかないであろう。何より見た目も心根もキレイな若い娘さん。教えて欲しいことはたくさんあるし、是非とも一緒に旅したい!

「もちろんですよ。俺もあなたのような優しくかわいいエルフェアーの女の子と旅できるなんて、光栄に思ってます。何より、記憶が無くて知らないことだらけなので、かえって迷惑をかけてしまうこともしばしばだと思いますが、そんな俺なんかでよければ」

「本当ですか?」

「ええ。本当です。俺はあなたと一緒にプラネットルナを旅をしたい、冒険をしてみたい、と思っています」

「わーい!やったー!」

 満面の笑みのリリエンヌ嬢。心が癒やされる。こんなかわいい子と旅をできるだなんて!俺は男として猛烈に嬉しい!

「そうだ!これからは一緒にパーティーとして旅をしていくわけだから、堅苦しい感じで会話をするのはやめにしません……いや、やめにしないかい?大人や力士だと思って遠慮しがちに話されたら、本当に言いたいことや伝えたいことが伝わらないと思うしさ。俺、知りたいこと、教えてもらいたいことが、きっとたくさんだと思うから、遠慮無く話しかけて来て欲しいんだ」

「そういうことなら……。分かったわ。話すだけでHPを必要以上に消費してしまうのももったいないしね。その、サンちゃん、って呼んで良いかな?そのほうが気軽に話しかけやすいから」

「もちろんだよ。俺は、そうだな、エンヌ嬢と呼ばせてもらうよ。これからよろしくね、エンヌ嬢」

「こちらかそ、だよ!サンちゃん」

 俺とエンヌ嬢は、しっかりと握手を交わした。小さくてものすごく柔らかい手であった。それに温かい。もし、この出会いが聖母様のお導きによるものなら、これほど素晴らしい出会いはない。いや、丑三つの行動からしてきっとそうなのだろう。ありがとうございます、聖母様。あなたに負けず劣らずの素晴らしい女性と巡り合わせてくれて。 

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