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プロローグ

時間調律師、それは時間を管理する守護者の事。


それを従えるのは、女王、アルフィミィ。


アルフィミィは時間を制するために時間調律師として戦士を幾度もある世界へと送っていた。


そんな彼女の元へ1人の男が時間調律師となるために、やってきた。


そして、そんな彼にアルフィミィが突きつけた1つの条件。


「私の妹、ステラを探して欲しい。この条件を呑めば、無条件で調律師にしてあげます」


調律師になるためには、戦士としての実力が無ければならない。


ところが、彼は、エリックは召喚師としては有能なのだが、戦士ではない。


だから、調律師になる為、彼はこの条件を呑んだ。


*


「ここか・・・」


時空の歪み、それは人類とは違う生物、”失われた知識”を持つ生物が、引き起こすもの。


”失われた知識”をもつ生物――”オーパーツ”を狩る事が、時間調律師の仕事。


そんな時間調律師の1人、ミレイユ・ヴァーチェは街の入り口で自分の持つ大剣を意識した。


「時間停止」


黄色い魔方陣が彼女の足元から街へ広がっていく。


街の風景が枠の中の絵の様に止まる。


「さてと、狩りの時間ね」


彼女は背中に背負っている大剣を抜く。


「レーバテイン、弾層一発消費」


彼女の持つ剣、調律師の武器、”調律具”の”レーバテイン”は柄の先についているリボルバーの弾を一発消費する。


カコンと音を立てて薬莢が落ちる。


「いくよ!」


自分の魔力を高め、飛ぶ。


「・・・見つけた、隠れてたって・・・」


黒い影。


これが、”オーパーツ”。


「無駄よ!」


ミレイユは上から、一段に斬り裂いた。


”オーパーツ”は真っ二つに斬られ、跡形も無く消えた。


ミレイユは屋根の上に着地。


レーバテインを下ろす。


「汚染物排除完了、時間再始動」


止まっていた街の風景が、再び動き出す。


最初のミレイユの行動から1分も経っていない。


「ふぅ、冷却開始」


レーバテインは白い煙を噴出し、高まっていた魔力が止まる。


「ごくろうさん」


ミレイユは一言レーバテインに言い、再び背負う。


屋根から飛び降りる。


白いドレスに金色の防具を付け、その上にマントを羽織ってはいるが、ミレイユはかなり目立っていた。


人々が此方を見ながら通り過ぎていく。


ミレイユはそんな人を気にせず次の街へと向おうとした。


『ミレイユ』


「ん?」


指揮者(オブザーバー)”の声だとミレイユはすぐに気付く。


「何よ?デル」


『アルフィミィ女王陛下からご命令だ』


「女王陛下から?」


『そうだ。第4の時間(世界)の東にある街、ヴルドンネで新人が待っている。

 そいつは女王陛下の大事な使者らしい。そいつを護衛しろ、との事だ』


「また、めんどくさいことね」


軽く手を振って”いや”というジェスチャーをするミレイユ。


オブザーバーには見えているかは不明だが、とりあえずめんどくさい時はそうやって手を振ってしまうのが癖になっているので、仕方が無い。


癖になったものは、直すのが大変なんだから。


ミレイユは心の中で愚痴る。


『ご命令だ、命令に従うんだな、時間調律師ミレイユ』


「はいはい、了解しました」


投げやりに返事を返すミレイユ。


そしてそそくさと街を後にした。


今のミレイユにある思いはただ1つ。


・・・「めんどくさい」。


*


商業の街、ヴルドンネ。


エリックは女王に言われてここでもう数日待機している。


「・・・ヒマだな・・・」


自分の調律具であり愛杖の”ジェズル”は壁に立てかけてある。


自分の護衛の調律師はいつまで自分を待たせるのだろう?


はやく、家族の仇を取りたいのに。


窓の外を見る。


とても活気がある。


視線を部屋の中に戻し目の前の調律具を見る。



『はやく、エリック!』


”オーパーツ”は時々、人の目の前に現れ、街を、時間を引っかきまわしていく。


その街でいるかいないかの数なのだが、たとえばエリックのように時間の歪みに気付く人がいる。


『逃げて、エリック!はやく!』


自分の姉が、自分の街が堕ちた日の景色が頭の中でぐるぐると回る。


まだ、3、4歳の自分は姉や父を措いて炎が燃え上がる街を走る。


当時の自分は姉や父が戻ってくると思っていた。


・・・笑って、帰ってきて、また何時もの生活に戻ると。


そう思って、止まってはいけない、止まったらみんなが帰ってこないと思って、走り続けた。



トントン



エリックはドアのノックで我に帰る。


「・・・どうぞ」


ドアが開く。


「食事だ、降りて来い」


やってきたのはいかつい安宿の店主だ。


宿の店主というより、格闘家のほうが似合っていそうな体格の持ち主だった。


「わかりました」


部屋に来た安宿の店主は短く言うとドアを閉め、食堂へ戻っていく。


エリックはベッド脇の時計に目をやった。


夕方5時。


自分の街が襲われたのも、この時間帯だったなと、エリックは思った。

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