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終焉の管楽器  作者: herbst
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終焉の管楽器 2

 クロエが目を開けると見慣れている兵舎の天井が目に入った。

 クロエが所属している機空兵団の兵舎は軍事産業が盛んなローズと呼ばれている都市にあり、この兵舎では主に自分の家を持っていないような若い兵士がおおく住んでいる。

 「おはよう、クロエ」

 声がするほうに目を向けると既に軍服を着たジュダス・クラークが立っていた。

 ジュダスはクロエと同じ部屋を割り当てられた兵士で、長く白い髪を後ろに束ね、身長は170を超えるくらいの少年だ。

「あぁ、大丈夫だジュダス」

「ひどくうなされていたよ。何か悪い夢でも見たのかい?」

 そうやって神妙な顔をしたジュダスが聞く。

「少し昔のことが夢に出てきた」

「そうかい、まぁ今日が初めて出陣する日だからね。気負いすぎるのもよくないよ」

 つい先日人類の生活圏に向かって聖骸の群れが移動してきているのが確認されたため、今日迎撃することになっており、群れの規模もそこまで大きいものでもなかったのと、ベテランの兵士が遠征にいったばっかりなので、新兵が初めて実際の戦闘に参加することになっている。

「わかってる、ジュダスもな。そっちも俺と同じような感じだろ?」

 クロエがそう聞くとジュダスは少し困ったような顔をした。

 ジュダスもクロエと同じように六年前のラッパによって故郷を奪われてい。

 ジュダスの故郷、カリオテはクロエの故郷よりも被害が大きくそこに町があったのかもわからないほど、蹂躙されていた。

「悪い変なことを聞いた」

「いいよ別に。僕は君と違って故郷のことをよく覚えていないしね」

 そう言ってジュダスは少し悲しそうに笑った。

 ジュダスは過剰なストレスのせいか六年より前のことは何も覚えていないらしい。

 ただ救出され目が覚めたときに、おそらくカリオテの住人だったのだろうと聞かされただけだった。

 いつまでもベットの上にいるわけもいかずクロエが立ち上がろうとすると、廊下から少し強めに扉をたたく音が聞こえてくる。

「おいお前らいつまで寝てんだ、今日は出撃命令が出ているから朝食ははやいぞ」

 外から少し機嫌が悪そうな声が聞こえる。

 時計を見るととっくに六時を過ぎていた。

「ごめんケニー、いまいくよ。ほらケニーもよんでるし食堂へ行こうかクロエ」



 

 食堂に行くと多くの兵士たちが朝食をとっていた。

 いつもはもう少し遅くまで食堂が開いているが今日は聖骸の迎撃があるため早めに閉まることになっている。食堂の空気も普段と比べて少しおもい。

 食堂の奥のほうでクロエと同じ班の二人が机をかこっている。

「お前ら起きてくるのが遅いぞ、お前らのせいで俺らの食べる時間が減ったじゃねぇか」

 そうケニーがいう。

 ケニーは筋肉質で大柄な少年で短く切りそろえた金色の髪がよく似合っている。

 基本的には班のメンバーがそろうまでものを食べることは許されていない。

 クロエたちが食堂に来るのが遅れてしまったせいで朝食の時間が残り半分くらいしか残っていなかった。

 クロエとジュダスが席に着くと、自動で朝食が運ばれてくる。

「悪いケニー、なかなか寝れなくて」

「しょうがないよ、私たちよりもクロエ君とジュダス君は私たちよりもおもうことはあると思うし」

 そう言って眠そうに小さな体を揺らしながらメイジがフォローをする。

「ありがとうねメイジ」

 そうジュダスが感謝をつたえると目をこすりながら気にしないでとメイジが答える。

「ったくしょうがねぇな、時間がないんだし早く食べるぞ」

 といってケニーが朝食を食べ始める。

 朝食はパンとスープ、そして目玉焼きにベーコンだった。

 普段よりも今日出撃の日のためかベーコンは厚く切られ枚数も一枚多かった。

 朝食のスープをクロエがすすっているとケニーが何かにきずいたように

「そういえばクロエ寝れてないって言ってたけど大丈夫なんか?」

 と聞いた。

「どうした急に」

「いや、ただでさえクロエは他のやつと違って訓練をした時間がみじかいだろ?途中から参加したから。初陣で同じ班のやつが死ぬなんて嫌だぜ、俺は」

 そうケニーがぶっきらぼうに言う。

 クロエは救出されたとき意識を失っており、目が覚めたのは二年前そこから半年のリハビリを経て訓練に参加した。

 普通の兵士は三年間訓練に取り組むのでクロエは、その半分の時間しか取り組めていなかった。

「それに聖骸と過去に因縁があるやつは早く死にやすいっていわれてるしよ」

そういわれたクロエは

「俺は死なないよ、まだ故郷の借りを返せていないから。それに訓練時の成績もいいほうだっただろ?」

 そう声を少し強めて言うと

「そりゃよかった。何度も言うように仲間が死ぬとこなんて見たくないんだ俺は」

 そうケニーは少し笑っていった。

 実際クロエの訓練時の成績はよく最初のほうは他の訓練生より遅く参加したため後れを取っていたがすぐに適応し最終的には5位の成績を残すことになった。

「それでもやっぱり新兵ばっかりだから不安ではあるよね」

 メイジは言う。その声は少し自信がなさげに揺らいでいた。

「でも今回の群れは頭が三つの聖骸までしかいないらしいよ」 

 とジュダスが今回の任務のことを話す。

 聖骸は大きく分けて三種類存在している。

 まず一番数の多い獣種とよばれる馬のような形をした聖骸。

 そして空を自由に飛び回り上空から攻撃をしかけてくる竜種と呼ばれる翼竜。

 この二種は頭の数が多いほど体が大きく、頭の数が5つ以上になると獣種は電撃、竜種は赤い炎を操ることができる。基本的に頭の数が4つまでは新兵でもなんとか対処が可能とされている。

 最後に最も力があり、羊の形をしている角種。

 角種の体はほかの種類の聖骸よりも体は小さく、個体数もかなり少ない。しかし竜種の炎と獣種の電撃、この両方の力を操ることができる。

 今回の聖骸の群れは獣種で頭が4頭よりも大きいのがいないと報告されていた

 




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