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終焉の管楽器  作者: herbst
1/3

1 始まり

 かつて、終焉を告げるラッパの音が世界中に鳴り響いた。

 その音は空に浮かぶ七体の異形から奏でられ、それを聞いた人間の三分の一は死に絶えた。

 それだけで終わることはなく、空が裂け、隕石が降り注ぎ、血の雨が降り、大地が炎に包まれ、水と空気が汚染され、星と月が消え、化け物が地上を闊歩するようになった。

 その結果、人類の活動圏は大幅に減少し、人口は元の九分の一まで減らす。

 しかし、そのまま滅びを迎える人類ではなかった。

 生き残った人類は一か所に集まることで立て直しを図り、化け物たちを殺すための兵器と兵士を用意することとなる。

 そうして人類は七体のラッパ吹く異形、そして聖骸と呼ばれる化け物たちとの長い闘いを続けることとなった。

 そして五十年後人類はもう一度滅びの音を聞くことになる。




「クロエ待ってよ」

 後ろから少女の声が聞こえてくた。

「なんだよ、ケイリ」

「みんな待ってるって、誰も気にしてないよ。かくれんぼの続きをやろう?」

 そういってケイリは僕をみんなが待っているとこへ引っ張ってくる。

 ケイリはいつもこうやって僕をみんなとつなぎとめてくれる。

「今更戻るなんてダサくていやだよ」

「誕生日に物をもらって泣くことは別に恥ずかしいことでもないよ」

「男子が泣くなんてやっぱりかっこ悪いよ」

「だから誰も気にしてないって言ってるでしょ、ほらいくよ」

 そう言われ手を引っ張られる。

 されるがままについていくとそこにはいつもの五人がいた。

「おっそいな、本当に帰っちまったのかと思ったぞ、わざわざ妹に呼びに行かせやがってよ。お前が泣くなんていつものことだから今更誰も気にしねぇよ」

 ほかの子供たちもケイシと同じように気にしてないと言う。

 ケイシを含めみんなは弱虫な自分と比べ余裕がありそして頼もしく感じる。

 それが少しみじめな気分になるがそんな気持ちよりも僕はこの仲間たちと友達でいられることがうれしかった。

「ごめんケイシ、みんな」

 そういうと、ケイリが嬉しそうに

「ねっ誰も気にしてないって言ったでしょ。かくれんぼの続きをやるよ、鬼はお兄ちゃんおねがいね」

 というとすぐにどこかへ隠れに行ってしまった

「しょうがねぇな、ほらお前らも早く隠れろ」

 そうケイシが言ってくれたので僕も隠れる場所を探しに行く。

 後ろでケイシが数字を数えているのを聞きながら隠れ場所探しているとちょうど子供がすっぽり入る暗がりを見つけたのでそこに隠れることにする。

 そのまましばらく隠れているとどんどん聞こえてくる声が多くなってくる。

 どうやらケイシにまだ捕まっていないのは僕だけのようだった。

 そして僕が隠れている場所の近くにケイシが向かってきているときに突如、脳に直接鳴り響くようなラッパの音が鳴り響く。

 ラッパの音が鳴り終わると、その代わりに多くの悲鳴やパニックに陥った人の声、そして獣のような唸り声が聞こえてきた。

 僕は獣の声と、普段聞くことがないような人の声が怖くて隠れたまま動くことができない。

 どのくらいそのままでいたのだろうか。いや多分一分もたっていないだろう。

 「いや、待ってこないでいや」

 「妹から離れろよ、この化け物が」

 あれ、この声は誰の声だっけ。聞き覚えがあるような気がする。

 恐る恐る外の様子を見ると、首が七つある化け物の前で恐怖によって足がすくみ、動けていないケイリをかばうようにケイシが立っていた。

 ケイシは棒をもって化け物へ向かっていく


 あっ

 

 ケイシが食べられてる。

 あれ、僕は何でケイシが食べられているのを黙ってみてるんだろう。 

 化け物はきっとケイシを食べた後ケイリを食う。

 なのに僕はどうしてずっと隠れたままで助けに行かないんだろう。

 「待って、まだ死にたくない待っていや、いや、いや」

 あれ、なんで僕はケイリが泣き叫びながら食べられてるのをただ黙ってみているんだろう。

 ケイリが食べられていくのをただ何も考えず、何も考えることができずにただただ眺めていると、ケイリがこちらにきずいた気がする。

 僕はとさっさに目を背ける。

「クロエ、助けていやいやいや。死にたくない」

 ケイリが僕に助けを求める声が聞こえてきた気がした。

 きっと気のせいだろう。

 僕は何も聞かなかったし何も見なかった。

 

 

 








 

 

 

 


 

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