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第八十五話 せっかく異世界に来たんだから、話をすり合わせたい。


ほとんどの鏡が本来の姿を取り戻した。

だが、二枚の鏡が二人の聖女の姿を映していた。


「さて、これからのことを話しましょう」


「そうですね」


テルマリリ様とラグスタットの聖女様の二人だった。

二人はこれからの隊の編成など話し合うようだがその前に聞いておかなくては。


「質問よろしいでしょうか?」


「まあ、そうですよね。そうでしょうよ」


テルマリリ様が頭を抱えてそうつぶやいた。

ラグスタットの聖女様からも乾いた笑い声が聞こえてくる。

だが、それ以上の言葉は無い。

つまり、アルマルデ様のことについて半ばあきらめているのだ。


「まずは、俺がフォルトロン継ぐというのは、理解いたしました。ですが、それに至るまでの経緯を教えて欲しいのです」


「説明すると、長いような、長くないような」


「一言で言うと?」


「新婚旅行で世界一周です」


「は?」


「つまりはですね」


テルマリリ様の説明によるとこういうことだった。

まず、ガシェルさんとアルマルデ様は結婚後、この王国内を色々旅していた。

それは修行の為だったり、人々の救済の為だったり、はたまたただの思い出作りだったり、その理由は様々だ。

そんな中、事件は起きた。

王都の買い物途中の福引で世界一周旅行が当たってしまったのだ。

当たったなら行くしかない。

早速準備を始めるが、そこで待ったをかけたのがテルマリリ様だった。

聖女が国境をこえるには手続きが必要なのだ。

しかも、その手続きには何日もかかるのだ。

そこで、アルマルデ様はひらめいたのだ。


「そうだ、弟子に継いでしまえばいいと」


「俺の了承もなしに」


「はい」


そして、要所に御触れをテルマリリ様に気づかれないように出し、ガシェルさんと高跳びしてしまったという事だ。


「我が師匠ながら、一言ぐらい」


そうすれば、文句の一つでも。

でも、それが嫌だから何も言わずに逃げたのか。

チクショウ。


「腹をくくりなさい」


「納得はできてませんが、理解はしています。遅いか早いかの問題です」


彼女の弟子なのだ。

いずれはくる話ではある。


「随分と落ち着いているのですね。成人してるなら、ドワーフ? ではないわよね。かなりの美形だし。でも、エルフにしては浅黒い? でも、ダークエルフは教会に入れないですし」


俺の反応に驚いたのか、ラグスタットの聖女は首を傾げながら俺の種族に疑問を持つ。


「ラグスタットの聖女様、私はまだ十三です」


「あ、成人前なの? そう」


何か言いたそうではあるが、飲み込んだようだ。

だが、その方がこちらも助かる。


「最後に、先ほどの話の中で『また』と仰っていましたが、その内容をお伺いしても?」


「簡単な話よ。前にも同じような話があったの。ラグスタットの民が盗賊に襲われた時に、キングレオ王国に逃げて行ったのです。そこで、王国に調査、討伐依頼をしたのですが、そんなものはいなかった、と。その後の十数回と同じことが起きているにもかかわらず、同じ報告ばかり。こちらでも調査をさせてほしいと書簡を出したのに返事はこない」


「なるほど、それで今回は議員のご家族が襲われて、堪忍袋の緒が切れたわけですね」


なら、盗賊と犯罪奴隷商が裏で繋がっている可能性があるな。


「それに、王国側がこんなにラグスタットとの関係が悪くなるような対応を容認するものでしょうか?」


「そうですね。王国の軍部に大量の武器が運び込まれた様子があるって前に聞いたことがある。前から計画的に仕組まれた可能性がありそうですね。もっと奥深く、根をたどっていかないと」


「こちらは、奴隷商から盗賊までの足取りを探ってみます」


「頼みました」


「あ、テラアナ様以外に奥様のレグセラ様はいませんでしたか?」


そういえば、彼女の記憶を確認したときに母親と一緒にさらわれたはずだ。

だが、全部を確認したわけではない。


「すみません。もう一度奴隷商を確認しに行くときにでも」


「お願いします」


さて、大体俺からの話は終わった。

ならば、後は行動あるのみか。


「それでは「待ちなさい」


テルマリリ様に呼び止められる。

何だろうか?


「盗賊は怪しい魔道具を使い、簡単に人を殺めることができると聞きます。もし、退治するのであれば、聴取できる人数以外はためらいなく首を切りなさい」


「断罪ですか?」


「いえ、自衛の為です。奴らを同じ人間として見てはいけません。罪を犯し、魔力を失い、天職を失い、犯罪職を刻まれた時点で、神は彼らを人間として見ていません。彼らは人はおろか魔物以下の生き物です」


その言葉を俺は飲み込めず。

頭を下げて、その場を後にするのだった。


「おかえりなさいませ」


扉を開けるとそこには壮年のシスターが俺を待っていた。

日はすっかり真上を向いていた。

入ったのが朝だったのでかなりの時間が過ぎたようだ。


「何が起きているのですか?」


どう説明した者か。

でも、下手に隠すと後々協力してもらう時に困るだろう。

異端審問隊も来るし。


「大きな悪意がこの町を覆っている。しかも、神を冒涜するものだ」


「かしこまりました。何かあればすぐにでもご助力させていただきます」


詳しいはなしはできないのに、彼女は色々と察してくれたようだ。

さて、俺は俺でできる事を。


「大変です!!」


迷路を抜け、教会の廊下を歩いているとシスターが走ってくる。


「今日連れてこられた女性が、ナイフで、く、首を!!」


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感想もお待ちしてます。

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