第七十八話 せっかく異世界に来たんだから、ダンジョン生活をしよう。
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俺が寝て起きると、ユウタと呼ばれていた男の子が起きていた。
しかも、肉の焼けるいい匂いがする。
どうやら、東雲さんがギガントの肉を焼いておいてくれたようだ。
『おはよう、ございます』
『おはよう、きみが、ゆうたくんでいいのかな?』
『はい、松山 雄太っていいます』
『おれはルヴァンだ。よろしく』
俺がそう言って手を出すと躊躇いがちに手を握った。
握力もしっかりしている。
〈介助〉はしっかり定着しているようだ。
彼も起き、東雲さんも落ち着いただろう。
『じじょうをききたい、なぜここに?』
『それは私も知りたいです。塾帰りに雄太と一緒に歩いていたら、急に光に包まれて、それからは』
東雲さんがそう言って松山くんを見る。
『最初に目を覚ました俺は大きな通路にいました。近くで凜が倒れていたので、背負って歩いていたらでかい化け物に出くわして、それで』
松山くんは震え、言葉をつなぐことができなかった。
きっとそこで、重症を負ったのだろう。
平和な世界から来てギガントに出くわし、よく生き残った。
『その時に私が目を覚まして、雄太を担いで逃げました』
『このあなは?』
『私が作りました。無我夢中で逃げていたら、右手が赤く発光して。目の前まで近づいてきた化け物にその手を振ったら化け物は吹き飛ばされて、その後ろにこの穴ができてました。』
奇跡的に何かのスキルが発動したのだろう、不幸中の幸いだったわけか。
もしかして。
『おれがくるまえに、なにかねがいました?』
『え? はい、誰か雄太を助けてと』
なるほど、ギガントを吹っ飛ばす力に俺を呼びだす転移魔法、東雲さんは願望をかなえる系のスキルを持っているのかもしれない。
それで、近くにいた俺が呼ばれた。
それならつじつまが合う。
ダンジョンは落とし穴系の罠があることはなんとなく知っているが、転移魔法を使えるなんて聞いたことが無い。
『僕たちはどうなるのでしょうか?』
『わからない。おれもきゅうにここによびだされた。だんじょんのなかだというのはわかるが、どこにいるかも』
『ダンジョンですか?』
『こまかいはなしははぶく。ここにとばされるすこしまえにこのだんじょんをみつけた。おうえんがくるまで、みはりをしてたら、ここにとばされた』
『そうなんですね』
二人とも目に見えて肩を落とした。
でも、二人とも状態は問題なさそうだ。
『これからでぐちさがす。ぜったいにまもる。ついてきてほしい』
『えっと、あの化け物は大丈夫なのですか?』
『まじっくぽいんとまんたん。だいじょうぶ』
『そこまでいうのなら』
『ぼくも、分かりました。よろしくお願いします』
俺達は食事をして腹を満たすと、松山くんの手に〈介助〉を重ね掛けする。
その時に彼が話しかけてきたのだった。
『僕はの腕はやっぱり食べられてたんですね』
『いちじてきになおしただけ。ここをでてたいりょくがついたら、かんぜんになおす』
『日本語上手ですね』
『ひさしぶりだから、かたことだけど』
『ここはなんて国なんですか?』
『キングレオおうこく』
『聞いたことないですね』
『いせかい』
『世界が違うんですね。僕たちは帰れるんですか?』
『わからない』
でも、たぶんそれは限りなく無理であろう。
ただ、その事実をここで話すのはあまりにも酷であると判断し黙っておくことにした。
支度を整えると久しぶりに穴を出るのだった。
俺の睡眠は最近は五日に一度でいい。
最後に寝たのがダンジョンに入る前日だ。
つまり少なくともここで四日間も過ごしたことになる。
さすがに四日も過ぎればギガントたちも落ち着いたのだろう。
忙しなく走り回るギガントは一匹もいないようだ。
それでも、ギガントたちの巣窟になっているここは少し歩くだけで、ギガントがいるのだ。
なるべく戦いたくない俺達は息を殺しながら、ギガントたちの目をかいくぐり道を探したのだった。
そして、何度目かの曲がり角を曲がったところで上へ向かう階段が見つかった。
『かいだんのぼる。ついていて』
『『はい』』
慎重に階段を上っていく。
だが、ギガント仕様の階段で一段一段が大きい。
俺達はギガントが来ないよう願いないながら登っていく。
そして、やっとの思いで上り切る。
しかし、そこはまたダンジョンだったのだ。
『はあ、はあ』
『大丈夫か?』
東雲さんが疲れて肩で息をしている。
でも、階段の近くはあまりにも危険すぎる。
俺は東雲さんを抱える。
『まつやまくんはだいじょうぶ?』
『え? あ、はい』
『ここからすこしはなれたところで、きゅうけいとる。がんばって』
『わ、分かりました』
俺達は小走りにダンジョンをかけて行く。
そして、何の気配もしない部屋に入り、息を潜ませて休むのだった。
『とりあえず、ここで』
『変な、匂いが、しますね』
松山くんが息も絶え絶えになりながら言った。
そういえば確かに。
何か腐ったような匂いが。
『きゃあ!』
東雲さんが悲鳴を上げた。
その方を見ると、骨の山があったのだ。
しかも、人の骨らしきものまである。
多くの人がここで犠牲になったのだろう。
グオオオオ!
「しまった!」
今の東雲さんの悲鳴でギガントの一体が気づいたようだ。
俺はすぐにそのギガントを〈レーザー〉で打ち抜き、気絶させるがもう遅かった。
大きな足音がここに向かってきている。
『にげる!』
その掛け声に二人とも走り出した。
何度も曲がり角を曲がる。
ギガントに出くわすたびに俺は額を〈レーザー〉で打ち抜き気絶させる。
だが、そんな時に東雲さんが転んでしまうのだった。
『や、やだ!』
目の前にはギガントたちが迫ってきている。
俺は酒の入ったボトルを一気に飲み干した。
そして、東雲さんを庇うようにギガントたちの前に出る。
俺は力いっぱいに叫んだ。
「〈レーザー〉!!」
ギガントが俺に触れる直前、光が俺達を包んだ。
そして、光が止み視界が開ける。
そこには一直線に通路がえぐれ、壁や床がドロドロに溶けいた。
その先には眩い光が見える。
きっと外なのだろうが、前を進むのは無理そうだった。




