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第七十三話 せっかく異世界に来たんだから、久しぶりに全力を出してみよう。


カタハナ村からキャラバンが出て丸一日が経った。

今日のお昼ごろにはギーレンの町に着く、はずだった。


「そっちにトロールが行ったぞ!」


「なんでギガントがいるんだよ!」


魔物の群れがキャラバンを襲ってきたのだ。

しかも、その魔物がどれも巨人種と呼ばれる耐久力や筋力の強い魔物だった。

その代わりに知力や魔力がほぼないに等しいので、倒すこと自体はそんなに難しくはないのだ。

だが、固い皮膚や厚い脂肪で打撃が通りにくい。

剣などで切るのもかなり難しい。


「っち! センタがやられた!」


「もう、どうなってるのよ!」


冒険者たちは素人の俺でも分かるほどよく連携が取れている。

かなり熟練の冒険者なのだろう。

でも、既に十人中三人が戦闘不能になってしまった。

本来は手を貸すと、彼ら冒険者の報酬が下がるからあまり手を貸してはいけない。


「お兄ちゃん。こわい」


ノンノが怖がっている。

そんなことも言ってられないだろう。

俺は戦闘に加わろうと魔法少女杖を取り出そうとする。


「あっ」


そこで、俺がカタハナ村に杖を置いてきてしまったのを思い出した。

杖が無くても魔法自体は発動できるが、杖があった方が細かい調節ができたり、MPの消費を抑えることができるのだ。


そういえばあれが!


俺はカバンの中から昔天職の儀の時にシューランからもらった、杖とローブ、服があるのを思い出した。

それを取り出して、急いで着替える。


「お兄ちゃん?」


「大丈夫だ」


ノンノは不安そうな顔で俺を見つめた。

そんなノンノをリリシアの隣に座らせる。


「ルヴァン、その恰好は」


「リリシア、ノンノを頼む」


「ダメ、行っては、ん!」


リリシアに軽くキスをする。


「ごめん。でも、このままでは俺たちは無事に済まない。絶対に守るし、戻るよ」


「もう、あんまり無理はしないでよ」


「それはできないよ。大好きで守りたいってものがあるんだから。多少の無理は押し通す」


「もう! はあ、ノンノちゃんは任せて、絶対戻ってきて」


「分かった」


俺は馬車を出る。

そこで、改めて今の状況がかなり切羽詰まっていることが分かった。

前線でタンク役として戦っているのが一人だけだ。

横を見ると、大柄な男が二人横たわっていた。


「前線が崩壊してる」


「なにしてるの! 子供は馬車に戻りなさい!!」


杖を持った女性が俺を見て大声で起こる。

切羽詰まった状況で戦っているのだ。

興味本位で子供が出てきたのだと勘違いしたのだろう。

でも、俺は彼女の言葉を無視して酒を口に含み、職業スキルを発動する。


「〈帝王の威圧〉発動!」


「え?」


スキルの発動と同時に魔物たちの動きが遅くなった。

それどころか、恐怖した一部のトロールたちが後退していく。

聖帝のスキルで、自分よりステータスのどれかが一つでも低い敵の行動を抑制スキルだ。

この三年間、主に調合のスキルばかりあげていたが、他のスキルを疎かにしていたわけではない。

さらに、固有魔法〈ヴァルハラ〉を発動する。

この魔法も以前よりもずっと使いやすいように改良したのだ。

瞬時に直す能力はそのまま、回復魔法の無効時間を体を欠損した人限定に一日までに抑えることに成功したのだ。

他にも、この魔法には身体強化の補助能力もあることが分かり、その能力を伸ばした。


「久しぶりに発動したから、成功してよかった」


「君は、いえ、あなた様は」


大柄な男が白い翼に抱かれた十字架を手で握りしめて、俺に片足をついて祈りを捧げた。

それで、フォルトニア信者なのはすぐに分かった。

だが、まだ終わっていない。


「態勢整えてください! まだ、多くのギガントとトロールが残っています!」


「はっ! みんな、聖帝様の指示に従え! 動けるものは前に出るんだ!」


「補助魔法を更にかけます」


「はい!」


聖帝は万能な職業で、光魔法や聖魔法を中心にどんな魔法も覚えることができる。

また、俺は近接戦闘も行うので属性魔法は一部だけにして、補助魔法を中心にこの三年間鍛えてきた。

スピードを上げる〈クイック〉、パワーを上げる〈ブースト〉、防御力を上げる〈ハード〉を冒険者たちにかける。


「すごい、さすが聖帝様だ」


大柄な男はそうつぶやきながら、一体ずつ、魔物たちを切り倒していったのだった。

だが、この〈聖帝〉の職業にも欠点はある。

色々できるが、〈聖帝〉の専用スキルが少なくて〈帝王の威圧〉ぐらいしかまだ使えない。

つまりは特筆して何かが得意と言えるものが無いのだ。


「やっぱりベテラン冒険者だったな」


俺が考え事そしている間に冒険者たちは巨人たちを囲って一つにまとめていた。

これで、戦いやすくはなるが、まだ数十もの巨人がいる。

全部倒すまで補助魔法が持たない。

久しぶりに全力を出してみるか。


「すみません! 魔法を放ちます! 退避してください!」


後方から大声で伝えるとそれぞれが手を上げてくれる。


「では、いきます!」


準備ができて合図を出すと全員が魔物たちを距離をとる。

そして、光魔法の〈ビーム〉を放とうとした時だった。

本来、手のひらサイズの魔法陣が膨れ上がり、俺の身長と同じくらいの大きさになる。


「やばい。逃げて!!」


ゴッゴゴゴゴゴ、ドゴーーーーーーン!!


光の大きな直線が地鳴りを起こしながら放たれる。

そして、眩しいほどの光が消えると魔物はおろかその後ろに広がる魔物が出てきた森も巻き込み一直線にすべてを吹き飛ばしたのだった。

よく見ると地面が溶岩のように溶けドロドロになっている。

冒険者の皆様は驚いて言葉を出せずにいた。


「〈神の奇跡〉いや、〈神の怒り〉が我らを救ってくれたんだ。聖帝様!」


そんな中でも大男は平伏し俺に祈りを捧げていたのだった。


「と、とりあえず、被害状況を確認しましょう」


「は!! おい、やられた三人以外はどうだ!」


「え? はい。こっちは大丈夫っす」


「こっちもよ」


先ほどまで戦闘していた七人はもちろんの事、大けがをしていた三人も何もなかったかのように起き上がった。

三人とも折れたはずの患部を触りながら、驚いている。


「俺の魔法で回復しておきました」


そう言うと信者の男は涙を流したのだ。


「さ、さすがでございます。聖帝様」


その聖帝様で呼ぶのは止めてほしい。

だが、そう伝える前に先ほど俺に怒鳴った女性が近づいてきた。


「リーダー、そのセイテイサマって、なんですか?」


「し、知らないだと!?」


「はい」


「この方は〈聖帝〉ボルヴァード・フォルトロン・ハーキスタ様だ。〈聖女〉アルマルデ・フォルトロン様、テルマリリ・フォルトマル様の正当なお弟子様であり、前者の後継者でもあられる。その上で生きて帰るのは絶望的と言われた先のリボルヴァードラゴン討伐では若干十歳の年で戦場をかけ、私たちを勝利に導いてくださった方である。その時に寝る暇も惜しんで私たち兵士の治療にあたってくださるだけでなく、死を待つだけとなった酷い怪我をした兵士を一瞬で治されたのだ。その奇跡を今一度俺は目の当たりに出来たなんて、何という幸運!」


そうか、この人はあの戦場にいたのか。

だから、すぐに俺の正体に気づいたのだな。


「恥ずかしいし、そこまでにして」


「かしこまりました!」


そう言って、大男は俺を語るのをやめてくれるのだった。

俺は馬車に戻るとリリシアとノンノが俺を抱きしめてくれた。


「おかえり」


「ただいま」


二人の額にキスをする。

ノンノは嬉しそうにするが、リリシアは少し物足りなそうだった。

そういえば、さっきの威力の〈ビーム〉は何だったんだろう?

とりあえず、自分のステータスを久しぶりに確認してみる。





ボルヴァ―ド・フォルトロン 13歳 介護士Lv100 / まほうつかいLv100 / 聖帝Lv13


状態:神格化


HP 6746/6788

MP 測定不能


筋力 6528

知力 7523

魔力 342028




はて?

測定不能とは何なのだろうか?









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