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閑話 あの日の言葉

こんにちわ!

よろしくお願いします!

私、アルマルデは自分が聖女などと呼ばれてはいるが、自分がそんな大層な者でないことくらいは分かっていた。

生まれも育ちも平民で、たまたま天恵スキルを三つももらっちまったがためにそんな風に呼ばれただけだった。

それに、聖女であったって本当に大切な者を守れなかったら、何の意味もないのに。


「聖女様、お助けください!」


年末の王城のパーティーに教会の代表として参加していた。

パーティーも終盤に差し掛かり、あいさつ回りも終わったあたしは休憩室で休んでいるとハーキスタ家のリシャリアが入ってきた。

彼女に連れられるがまま急いで向かうと一人の女の子が倒れていた。


「なんで治らないんだ!」


既に宮廷魔法師が四人がかりで回復魔法をかけているが彼女の様態は悪くなる一方だった。


「どきな! 〈ヒール〉」


愚図どもをどかしてあたしは回復魔法をかけるが、他のもの同様全く効かなかった。


これは〈原初の毒〉!


この毒は全ての毒の原点であり、他の魔法や色々な混ぜ物をしてある現代の毒とは違い、混ざりのない毒であるがゆえに魔法もスキルも効きづらく、どんな毒よりも体に浸透しやすい毒だ。


「エリクサーを持ってきな!」


あたしの回復魔法が間に合うか分からないが。


「やれるだけはやってやらないとね」


〈魔力ブースト 発動〉

〈回復ブースト 発動〉


天恵スキル二つを同時発動。


「〈リカバリー〉!!」


瀕死であっても、四肢がもがれていようと命さえあれば本来の姿に戻してしまう。

あたしが聖女といわれる力を使う。

だが、女の子を完全に直してあげることはできなかった。

それどころか毒に侵されて壊死した足を切ることになった。


その後、天恵スキルによる体への負荷で半年も満足に魔法が使えなくなってしまっていた。

魔法が使えないあたしは本部の教会にいても暇なので支部への巡礼を行った。

その間も命をなんとかつないだもののつらい人生を送っているだろう彼女のことが気になっていた。


「そういえば、次がハーキスタ領か」


あたしは気になりはしたが、完全に直してあげれなかったやつがどの面下げて会いに行けばいいのか分からないのでやめようと思った時だった。


「スキル鑑定依頼?」


地方の領の教会は小さいものしかない。

その為、鑑定〈スキル〉は王都から恒例の巡礼でくる修道者に頼まないといけない。

つまりは。


「あたしへの使命依頼かい」


どんな嫌味や憎まれ口を言われるか内心ハラハラしていたが蓋を開けると本当にただのスキル鑑定だった。

しかも、あの〈原初の毒〉を緩和させるスキルだと言われて確認に行くとそれは〈介護〉、〈介助〉というスキルだった。

肉親に老人や障害を持つ者がいると取りやすいスキルなのだが、謎が多いのでなかなか誰もこのスキルはとりたがらなかった。

聖職者であるあたしたちの方が一番取りやすいだろうが、回復魔法の方がそれだけとればよかったし、なにより回復させる時間も短かかったためだ。

あたしもその一人だった。


坊やはスキル鑑定を真剣に聞いていた。

彼の話だと魔力欠乏で倒れたらしい。

その為か、スキルを発動するとこを少し怖がっているようにも見えた。


「坊や、今は苦しんでいる人がいるのです。助けることができるなら、それを最優先にしなさい」


そう言うと彼は「ありがとうございました」と返した。

そして、かつて私が助けて上げれなかった女の子のもとへ坊やは走っていった。

ただ、本当にスキル〈介護〉があの子を救えるのか半信半疑だったあたしはリシャリア達と共に様子を見に行く。

すると、〈原初の毒〉に侵されているはずのリリシアが安らかな寝息を立てていた。

少しやせちゃいるが顔色も健康そのもの。

壊死し始めていた体の先も血色が戻っていた。


「坊やのスキルはすごいね」


思わず漏れた言葉だった。

原理は分からないが一時的とはいえあの毒を打ち消しているのだ。

見向きもしなかったスキルについて、考えを改める必要があるね。


その後も、坊やは自分のスキル、リリシアの飲んだ毒を知ろうと懸命にあたしの言葉を聞いていた。

向上心がある。

上の方にも後継は用意しろと言われていたのも思い出す。


「坊やがその気があるなら、あたしの弟子にしてやろう」


その言葉に間髪いいれずに「はい」とうなずいたのだった。

それが彼にはどうか分からないが、あたしにとっては最高の後継者を見つけられたという功績につながったのはまだ、坊やには言わないでおこう。





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