第六十七話 せっかく異世界に来たんだから、迷子を見つけよう!
遅くなりました。
俺がノンノがいないことをシラユリに報告するために探している時だった。
前からガンツが走ってやって来る。
その表情は険しいものだった。
「ガンツ、トントは?」
「お前の読み通りだ。どこにもいなかった」
村の門の前にノンノのリボンが落ちていたという事は、やはりあそこを通って外に出て行ってしまったのだろう。
だが、遠くの森からカタハナ村までの道のりには二人ともいなかった。
道からそれるとは思えないので、二人の行き先は。
「村近くの森だな」
「なんで、子供だけで森なんかに」
「考えるのは後にしよう。もうじき暗くなる、そうすれば魔物も動き出す。俺は先に森に行くからガンツはシラユリや村のみんなに伝えてから森に来てくれ」
「おい、ひと―
ガンツは何か言いかけていたが、俺は気持ちが抑えられずに走り出していた。
近くの森は比較的安全で、森の奥まで入らなければ魔物も出てこない。
それに、魔物も生き物であるので寒さから守るためにほとんどが洞窟に隠れたり、土の中で冬眠のような事をしている。
光火の月と比べれば危険性はずっと少ない。
だが、それでも活動している魔物は少なからずいるのだ。
俺は近くの森に到着すると間髪入れずに中に入った。
子供の足や体力ではそこまで奥までは入れないだろう。
「やっぱり」
少し探すだけで子供の足跡があった。
しかも、二種類。
トントとノンノの二人で間違いないだろう。
俺は二人の足跡を頼りに更に奥へと入っていく。
そして、森の間を通る川の近くにたどり着いた。
「っち」
川の辺で二人の足跡が途絶えていたのだ。
落ちたのか?
もしかして溺れ!
「急がないと!」
ただひたすらに川辺を下って二人を探していく。
だが、森の外に二人を見つけることができなかった。
どこかで見落としたのか?
俺は川をさかのぼろうとした時だった。
「ルヴァン!」
「シラユリ」
シラユリが俺に追いついたようだ。
ただ、シラユリも急いでいたようで、エプロンを付けたままの姿だった。
「ガンツさんから話は聞いた。手がかりは?」
「川に落ちた可能性がある。だから、ずっと川沿いを探してるんだが」
「……うそ」
俺の言葉にシラユリは瞳に涙を浮かべる。
あまり考えたくないが最悪の場合も。
「他に手がかりがないか森を全体的に探してみる。シラユリは俺が見落としがあるかもしれないから川沿いを探してみてくれないか」
「……うん、分かったわ」
俺はシラユリと別れて森の奥へ駆け抜けた。
やはり、寒い時期なだけあって魔物は全く見かけない。
そんな時だった。
木と木の間を白く揺れる何かが通り過ぎた。
俺は藁にもすがる思いでそれを追いかける。
そして、少し開けた所に出るのだった。
「お兄ちゃん?」
そこには、涙を流しながら座り込むノンノがいたのだった。
そして、ノンノの前には横たわるトントにそれを見つめるコボルトがいたのだった。
「トントに何をした!」
俺は杖を取り出す。
そして、深呼吸で恥ずかしさを押し殺す。
「マジカルチェーンジ!」
久しぶりに魔法少女に変身する。
そして、変身中の発光によりコボルトの目を奪い、その隙にノンノとトントを回収したのだった。
二人とも息はある。
トントは気を失っているだけのようだ。
まずはこの状況をどうにかしないと!
「まずはコボルトを」
「待って、お兄ちゃん!」
ノンノが俺に抱き着いて動きを止めてきた。
しかし、相手は魔物だ。
隙など見せれば俺達が殺されてしまう。
俺はノンノを振り切って攻撃を仕掛けようとする。
「魔法少女?」
「へ?」
「マジで魔法少女だ! この世界に魔法少女いるんだ!!」
なぜかコボルトは興奮気味に近寄ってくると、俺の手を掴んで瞳をキラキラと輝かせるのだった。
これはあれだな。
とりあえず。
「名前を聞いてもいいか?」
「俺っすか? 俺は猫田 東一っていいます。よろしくおねしゃしまっす」
コボルトって犬なのに猫田なんだ。
しかも、チャラい。
ちょっと苦手なタイプだ。
「それで、魔法少女のお姉ちゃんは?」
「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ」
猫田の言葉にノンノが反応する。
そして、猫田は固まった。
「えっと、ちょっち待って。え? 君、男? 女?」
「お、男です」
猫田は目をぱちくりとさせる。
そして、顔を覆いながら涙して猫田は叫ぶ。
「こんなかわいい魔法少女が男の娘だったなんて! 詐欺だ!」
「うるせえよ! 俺だって戦いになると思ったから恥ずかしさこらえて、そこそこ防御力のあるこの服にしたんだよ! 二人の命がかかってると思って必死だったんだよ! もう、ほっといてくれ!」
「お兄ちゃん」
ノンノが申し訳なさそうに俺のスカートを引っ張る。
「す、すごく。かわ、いいよ」
恥ずかしそうにノンノが褒めてきたのだ。
ああ、首をつって死のう。
俺は手ごろな木の枝に魔法少女のコスチュームのハートの付いたベルトを取り付けて、輪を作り、頭を通そうしようとした時だった。
「そ、それはダメっす! シャレにならねっすよ!」
猫田が必死に止めようとして二人して倒れ込む。
その時だった、猫田はどこうとするがコボルト特有の鋭い爪が俺の魔法少女の服に引っかかり大きく切れてしまう。
「え? 何この状況? 薄い本の世界に迷い込んだの?」
シラユリがいつの間にかそこにいて、こんなあられもない格好をノンノに見られて、男の尊厳を著しく失った俺は顔を赤くして、思わず悲鳴を上げるのだった。
面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をお願いします




