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第六十一話 せっかく異世界に来たんだから、その笑顔を見ていたい。

よろしくお願いします。


事後処理を全て大人たちに任せて、俺とリリシアお嬢様、スピレイの三人で先に王都に帰ってきたのだった。

帰ってきた俺は教会ではなくハーキスタ家のお屋敷に住まわせてもらった。

教会に戻ろうとも思ったが、お嬢様が「なんで行っちゃうの?」と涙目になって止めてきたので厄介になることにしたのだ。

まあ、お嬢様と積もる話もあったし、俺も一緒にいたかったのもある。

そして、三日が経った頃俺はシシリアお嬢様と買い物に出かけて来ていたのだった。


「ねえ、ルヴァン。このドレスはどう?」


「とてもにあってます」


何十着目かになるドレスの試着に対して、誉め言葉のボキャブラリーの少ない俺は無難な言葉を返すことしかできなくなっていた。

それに対して、お嬢様は頬を膨らませる。


「もう! ルヴァンの為に来てるのに、もっと積極的になってよ」


ご自身の為ではないのだろうか?

なんとか、笑顔を保ったまま「すみません」と答える。


「ルヴァンはどんなドレスが好きなの!?」


「え?」


なぜ、そんなことを聞くのだろうか?

好きな物を買えばいいのに。

でも、この中で好きだというなら。


「この白いワンピースみたいなのとか好きですね」


お嬢様は奥様が好きなので奥様が好んできているローズレッドやロイヤルパープルのような濃い色ををベースにしたドレスを着たがる。

確かに奥様によく似ていて吊り上がった大きな瞳に、高い鼻が特徴的な綺麗な顔をしている。

一見するとよく似合っている。

だが、お嬢様の太陽のような笑顔には白いワンピースの方がよく似合うと思ってしまった。

それと俺の趣味だ。

やっぱり清楚系の服を着てもらった方がうれしい。


「そう、分かったわ」


お嬢様は他の服は下げさせて、俺が選んだドレスだけを購入するのだった。

朝早くに出たはずなのにドレス選びだけですでにもう昼時だった。


「次は宝石店に行くわよ!」


お嬢様に手を引かれてブティックを出た時だった。

少し離れた所に兵士のお兄さんが立っていた。

しかも、いかにも貴族のような服を着ていた。


「今いいかな? ボルヴァード・フォルトロン・ハーキスタ殿」


「少し待ってもらってもいいですか? ボルドロフ・ギーレン公爵様」


さすがに兵士たちを率いてドラゴン討伐に来ていたので貴族であるのは気づいていたが、まさかこんなに若いお兄さんが公爵様だとは思わなかった。

てっきり騎士爵あたりかと思っていたのに、ハーキスタの人に調べてもらってその正体を知った時は驚いた。


「すみません。すぐに済みますので、お嬢様はカフェで待っていただいててもいいですか?」


「……分かりました」


お嬢様は付き添いのメイドと一緒に少し離れたカフェに入っていった。

ギーレン公爵に促されて俺は近くのベンチに座る。


「すみません。本当はこちらから出向かなくてはいけないのに」


「いいんだよ。俺も君には会いたいと思っていたし。ただ、事後処理がまだ終わらなくね。時間が無いから手短にいこう」


「はい」


「まずは、今回の討伐ありがとう」


そう言って、ギーレン公は深々と頭を下げる。


「や、やめてください」


「こんな形式でしかお礼ができないのだ。せめて、この言葉は受け取ってほしい」


今回の件で子供の俺が国王の命令で戦地に行ったことがかなり多方面の人を怒らせてしまったのだ。

まず、ハーキスタ伯爵家が大変ご立腹し、国際同盟連合会という所に通報してしまったそうだ。

この国際同盟連合会は世界規模で問題が起きた時に国単位で一致団結させる機関なのだが、その中でもルールがあるのだ。

その中に子供の保護条約があり、十五歳未満の戦争、討伐の参加、要請を禁止するものがあるそうだ。

さらに、フォルトニア教会は子供の安全な育成を進めている。

それなのに国教にしているキングレオ王国で子供を死の危険に追いやったのだ。

この事から各方面からこの国の国王であるバルバド・キングレオを王としての資質を問われ、近いうちに皇太子に次の王権を委譲することになった。


そういう事で、俺は功労者ではあるが、被害者でもあるので今回の討伐の報酬を表立って渡す事はできないのだ。

被害者として何かしらの慰謝料はもらえるそうだが。


「まあ、普通に考えたらおかしいですしね」


「俺はお前が本当に十歳なのかって方が疑問だけどな。そこら辺の馬鹿どもに話をする以上に理解が早い」


「これでも、十歳ですよ」


「そうだよな」


ギーレン公は納得はしていないようだった。


「それと聞きたいことってこれだろ?」


俺に一枚の紙を渡してきた。

その中には俺が知りたいことが書かれていた。

だが。


「これだけですか?」


「元々若い衆の集まりで、しかもほとんどが独り身だったから」


「そうですか」


「どうするんだ?」


「俺は行こうと思います」


俺の言葉にギーレン公は大きなため息を吐いた。


「……本当にガキらしくない」


「すみません」


「ちゃんと各方面に話は付けておけ。こっちで準備できることはやっておく」


「助かります」


そう言って今度は俺が深く頭を下げる。

そして、頭を上げるとギーレン公は呆れた顔をしていたのだった。

ギーレン公は話が終わると近くに止めていた馬車に乗って帰っていったのだった。

俺も待たせているリリシアお嬢様の所に向かう。

お嬢様はカフェのテラス席で紅茶を飲んでいた。


「もう話は終わったの?」


「はい」


「じゃあ、宝石店に行こう」


そう言って残りの紅茶を飲み干した。

そして、俺の手を取って走り出した。

その手は先ほどよりも強く握られていた。


王都一の宝石店でもブティックと同じくらい時間がかかると思っていたが、そうでもなかった。

アクセサリーがあまりにも高価過ぎたのだ。

まあ、子供が手を出すものでもないしな。


「お嬢様、機嫌を直してください」


「怒ってない」


だが、先ほどの以上に頬が膨れている。

何がいけないのだろうか?


「リアって女の子はもらったのに」


……はい。


「お嬢様、宝石店に戻りましょうか」


実は教会に所属して仕事をしていると少しだが給料のようなものをもらえる。

だから、少しは貯えがある。

でも、微々たるものだ。

お嬢様が他に目移りしないうちに。


「店員さんこれをください」


俺はお嬢様の髪の色によく似た濃い赤色の宝石がはめられた指輪を指さす。


「坊や、ここは「これで足りますか?」


俺がお金の入った袋を出すと店員さんは驚いた顔をして数える。


「十分足ります。今指輪を合わせますね」


「お嬢さま」


「う、うん」


俺が促すとお嬢様は親指を差し出した。

そして、俺を見る。

大丈夫、何も問題ないよ。

ない、よ。

俺は頷くとリリシアお嬢様は嬉しそうに微笑んだ。

指輪はすぐに調整されお嬢様の指にはまったのだった。


「ねえ、ルヴァン」


「どうしましたか?」


「一生大事にする」


「そうですか」


そう言ってもらえると送った甲斐があります。

懐は大変痛いですが。


「それとね、私をお嬢様って呼ばないで。リリシアって呼んでほしいの」


いいのだろうか?

俺は貴族でも何でもないのだが。

まあ、お嬢様がいいというならそうするか。

人目がある時だけお嬢様に戻せばいい。


「分かりました、リリシア」


「うん」


リリシアは満足そうに笑うのだった。








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