第五話 せっかく異世界に来たんだから死にたくない
第五話です
よろしくお願いします!
目を覚ますと小さな部屋のベッドの上だった。
お決まりの言葉を言ってみる。
「知らない天井、じゃないな」
周りを見回す。
「見覚えのある部屋だ」
そして、窓から外を覗いてみる。
そこにはどういうわけか太陽が三つあり。
首が二つある大きな鳥が飛んでいた。
「うん、この状況は二度目だな」
あれ?
でも、俺の記憶が正しければリリシアお嬢様をスキルで治療していたような。
それで、左足が戻って。
「あれれれ?」
これはもしかして、かの有名な死に戻り!?
君を救うためなら 俺は何度でも死ぬ、なんて言ってみるか!
「起きましたか」
セシアさんがリンゴをもって部屋に入ってきた。
しかも、不機嫌オーラ全開で。
あれ??
でも、あの時は優しく褒めてくれていたのに、今回はすごく怒っていらっしゃる。
何も言わずにベッド横の椅子にセシアは座り黙々とリンゴを切る。
「ルヴァン」
「はい!」
突然呼ばれて俺は思わず大きな声で返事をする。
「あなたは今後スキルを無暗に使ってはいけません」
「スキル?」
なぜ、いきなりそんなことをいうのだろうか?
セシアさんはと小さなため息をついた。
「ルヴァンは分かっていないのですね。あなたはスキルでお嬢様の身体を一時的に直しました。ですが、あなたのスキルは魔力を必要とするスキルだったのです。そのせいで重度の魔力欠乏症になり二日も寝込んでいたのですよ」
「魔力欠乏症?」
「そうですね、本来はもう少し後に教えてあげるつもりでしたが、よく聞きなさい」
セシアさんはむいていたリンゴとナイフを机の上に置いて話し出した。
「見なさい」
そう言ってセシアさんは人差し指を立てる。
するとその先に小さな炎がともった。
「これが魔法です。魔法とは魔力という素材を魔術という設計図で組み立てて、奇跡を起こす方法です。これを発動するには魔法適性という魔力を組み立てるのに必要なスキルが必要です」
人差し指を揺らして炎を消す。
次に机の上に置いてあったナイフで掌を切った。
「セシアさん!」
「大丈夫です。ちゃんと見なさい」
そして、掌を俺に突き出してくる。
その手には傷はなかった。
「これって?」
「私のスキルで自動回復といいます。ちなみに天恵スキルです」
天恵スキルって、もしかして!
「天恵スキルとはたまに生まれた時から持っているスキルで、ランダムで手に入ります。また、普通に取得したスキルの最高レベルよりも二回りは強い効果を持ちます」
あれ? 天恵スキルって、転生特典のはず。
ん?
しかし、俺の疑問などつゆ知らず説明を続ける。
「そして、魔法とスキルで発動する奇跡には大きな違いがあります。何かわかりますか?」
「えっと。魔術ですか?」
「そうです」
セシアさんは手を合わせると足元に魔法陣が現れる。
そして、その周りを薄く光る何かが漂い始める。
「魔法は魔術を通して使います。ですが、その過程で魔力が足らないと」
パリン、という音と共に魔法陣は消えてしまう。
「このように失敗してしまいます。しかし、スキルは一度発動すると奇跡が起こるか、発動者が死ぬまで発動し続けます。これであなたは自身のスキルで持っている以上の魔力を吸われてしまったのです」
「持っている以上に魔力は使うことができるのですか?」
セシアさんは少し考えた後口を開く。
「できます。いえ、ルヴァンは使ってますよ」
そうか、今回介護、介助のスキルで!
「魔力の代わりに体力などを使います。それもなくなると死にます」
「え? 死ぬの?」
死ぬという思わぬ言葉につい聞き返してしまう。
「そうです。さらに言えば、あなたはお嬢様の部屋で倒れた後、一度心臓が止まりました。なんとか、その場にいた医者が一命をとりとめて、奥様がエリクサーをなんとかご用意していただいたおかげであなたは今生きています」
その言葉に俺の全身が冷えて、震えが止まらなくなる。
わずか三歳という若さで死にかけたのだ。
もう、スキルを使えないかもしれない。
そんな俺のよう手を掴み、諭すようにセシアが話始める。
「必要以上に怖がらなくていいです。魔力枯渇になるたびに魔力量を上がる事から、魔法使いが成長するのに必要な過程です。きちんと手順を踏んで上げていけばいいのです」
「……はい」
「体調が戻ってから魔法の練習をしましょう」