第四十四話 せっかく異世界に来たんだから武器を見て見たい。
遅くなりました。
よろしくお願いいたします。
ローセリさんのお店で食事を済ませた後、俺達はライレッドさんに連れられて彼女のお店に向かっていた。
繁華街から離れしばらく歩くと、お店が所狭しと密集する大通りに出た。
「ここを曲がったところが私のお店です」
そこには、こじんまりとしたお店があった。
他のお店と比べると二回りは小さい。
だが、他のお店とは比べ物にならないくらい輝いていた。
「つか、眩しい」
店全体が光り輝いているのだ。
それはもう神々しく。
「え? 何を言ってるんだ」
ミドリちゃんは俺の言葉に驚き、俺に聞き返してきた。
見て分からないのだろうか?
店に光の玉が無数に張り付き、うごめいているのだ。
「動いてる?」
俺は店の外壁に張り付いているそれを一つつまんでみる。
よく見るとそれは小さな人型の身体に鮮やかな色の虫のような羽を持った生き物だった。
「なにこれ?」
「君には何か見えているのかい?」
「はい、なんかちっこいのが見えてます」
ライレッドさんがつまんでいるそれが見えていないようだ。
まあ、見た目的に妖精だろう。
しかし、こんだけいると気持ち悪いの一言に限る。
菜の花とかに群がるアブラムシみたいで気持ち悪い。
「そうか、妖精が」
ライレッドさんは何か思い当たる節があるようだ。
俺はオリバーさんに視線を向けると溜息を吐いた。
「最近この店に買い物に来た客がいきなり武器が落ちてきたり、あるはずのないところに置かれていたりして、怪我をする事件が多発しているんだ。そのせいで繁盛してたのに客が減っちまって」
「それで、何か対策ができないかあの店で話を聞いていてもらってたの」
その話を聞いてちっこいのに視線を向けると、ジタバタと逃げ出そうとしている。
俺はつまんでいる指を離すとまた、店に張り付いたのだった。
「なら、原因になるものが中にあるはずですね」
セシアさんはライレッドさんを睨んだ。
ライレッドさんは視線を横に逸らしたのだ。
「早めに言っておいた方が、解決が早いと思いますよ」
「う~~~~ん。はあ、分かったよ。実は中に世界樹の枝を材料にした杖があるんだ」
「せ、世界樹の、枝!?」
俺とミドリちゃん以外がすごく驚いた顔をしていた。
前世のゲームとかでも貴重なアイテムや武器の材料になることが多かったし、この世界でもそこそこ大事な位置にあるものなのだろう。
「え!?」
俺も一様驚いておく。
「ボルヴァードくん。なんなのか知ってるのか?」
「ミドリちゃんは知らないの?」
「恥ずかしながら。そう言ったものには疎いんだ」
「そうなのか。でも恥ずかしがることは無い」
「そう、か?」
「だって俺も知らないから」
「!」
そして、ミドリちゃんは俺の横腹を何度も殴るのだった。
地味に痛い。
「それで、その世界樹の枝ってそんなに貴重なものなのですか?」
「貴重なんてものでじゃない。普通どうやっても手に入らないものなのです。世界樹はエルフの中でもハイエルフと言われる人たちが守っているのだから」
「それって、セシアさんが言ってた贄とか巫女とかって話のですか?」
「そうよ。ハイエルフは世界樹の守護の為に生きて、死ぬの。世界樹の為なら命だって惜しまない」
「そんなものが何でこのお店に?」
ライレッドさんは観念したように両手を上げた。
「最近裏ではあるけどエルフの森との流通が多くなってきているの。森の薬草なんかがメインにはなのだけど、たまたま酒場で知り合ったエルフの兄ちゃんが私との賭けに負けて置いてったのが世界樹の枝だったの。最初はどうせ偽物だと思ってたんだけど、武器を作ってみたら内包する魔力の強さすごくて、その時初めて本物だって気づいたの」
本来なら目玉商品になるはずの武器が変なものをおびき寄せてしまったわけか。
前世の物語で呼んだが、妖精は純粋であるがゆえに優しさもある反面、非常に残虐な面もあるという。
この中でいたずら好きな個体が客に怪我をさせたのだろう。
「とりあえず、その武器を見てもいいですか?」
「わかった。こっちにおいで」
俺達はライレッドさんの後を追うように店内に入っていった。
だが、入ってすぐにオリバーさんに肩を掴まれた。
「どうしました?」
「一様、釈明をしておきたくて」
「?」
何のことだろうか?
「あいつは一流の武器職人だ。今回の件は他意があっての事じゃない。武器を作ったのはあいつの職人としての好奇心からだし、お前を連れてきたのも職人としてお前に合った武器を提供してあげたい気持ちでだ」
「そうですか、俺は彼女の事は何も知りませんがオリバーさんがそう言うならそう言う事にしておきましょう」
「ありがとう」
本当にオリバーさんはライレッドさんが好きらしい。
教え子として二人がうまくいくことを願うとしよう。
「これが私が作った魔法の杖です」
ライレッドさんがケースを取り出すそこには先端がピンクの色のハート型宝石が埋め込まれ、リボンで飾られ、ピカピカと光っていた。
杖というにはあまり長くない。
だが、カラフルな色合いがあるものを想像させる。
「魔法少女とかもってそう」
『君は魔法少女を知っているのかい!』
俺の言葉にいつの間にか先ほど見た妖精より一回り大きいのが飛んできた。
他の妖精同様可愛らしい見た目ではあるが、後ろに背負っているリュックにはポスターのようなものを丸めた筒がはみ出しており。
頭にはバンダナ、グルグルの丸い眼鏡をかけている。
いわゆる昔の秋葉系妖精だった。
『君に頼みがある』
「…………」
『世界を救ってくれないか?』
うん。
とりあえず。
「やだ」
『なんで! 君のような妖精が見える子を待っていたのだよ!』
こんなのに絡まれるくらいなら見えない方がよかった。
なんで、見えてしまったんだ。
いや、理由は分かっている!
〈まほうつかい〉のせいだ。
童貞を四十年守り続けた男は妖精が見えるようになるそうだ。
そして、五十年で〈ようせい〉。
六十年で〈けんじゃ〉、七十年で〈だいけんじゃ〉だ。
俺はこの転生も含めればもう四十五年近く童貞のままだ。
つまりはそう言う事なのだろう。
「もう、この世界滅ぼそうかな」
『なに、物騒なこと言ってるんだい? でも、ダークサイドに落ちた魔法少女もそそりますな~』
ホントこの妖精気持ち悪いな。
『それで、どうですか? 魔法少女は!』
「いや、俺は男」
少女でもなければ、女でもない。
『……男の娘。イイ!』
俺は近くにあった剣を振り上げる。
「ど、どうしたボルヴァードくん」
「それには悪霊がついている。早く壊さないと」
俺の行動をライレッドさんが止めてくる。
だが、これは壊した方がいい。
これさえなくなれば妖精もいなくなり店も元に戻るだろう。
『すみませんでした! お許しください! お願いします!』
オタ妖精も俺を止めようと必死になって縋りついてくる。
結局、俺はこの魔法の杖を処理することはできなかった。
明日はお休みします。
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